上野公園にある国立科学博物館で「大絶滅展―生命史のビッグファイブ」展を観てきました。
この企画展では一部作品を除いて写真撮影OKです。ただし、会場に掲載されている注意事項に従ってください。
展示内容
公式サイトの説明によると
生命が誕生してから40億年、地球上では幾度も生命の危機が訪れました。それは主に地球外からやってきた小惑星の衝突や火山などの地球内部の活動によりもたらされましたが、ときに生命活動そのものが引き金になったこともあります。しかし生命は、その都度、したたかにそれらの危機を乗り越え、絶滅したグループに代わるグループが新たに繁栄することを繰り返すことで、多様に進化を遂げてきました。
(中略)
様々な角度から5回の大量絶滅の謎に迫ります。
とのこと。
展示構成は以下の通り。
- Episode 1: O-S境界 海の環境の多様化 約4億4400万年前
- Episode 2: F-F境界 陸上生態系の発展 約3億8000万年前~約3億6000万年前
- Episode 3: P-T境界 史上最大の絶滅 約2億5200万年前
- Episode 4: T-J境界 恐竜の時代への大変革 約2億100万年前
- Episode 5: K-Pg境界 中生代の終焉 約6600万年前
- Episode 6: 新生代に起きた生物の多様化
各Episodeでは、コーナーの床にXX境界を表す線が描かれていて、その線の前後で大絶滅が起きる前と起きた後で生物がそれぞれ展示されている。それ以前にいた生物が大絶滅によって消え去り(もしくは種が激減し)、以後には別の生物種が栄えていったというのがよくわかる。
Episode 1の“絶滅前”では、Stephen Jay Gouldの「ワンダフル・ライフ」でお馴染みのバージェス動物群の実物化石やレプリカ、復元模型が展示されている。こんなに小さかったのかと驚くものもいれば、逆にこんなに巨大だったのかと目を丸くしちゃうものもあって、興味は尽きない。

ウィワクシアは小さなパイナップルか、松ぼっくりみたい。これ、脚はどうなっているのだろうか?いや、脚はあるのか?

最近人気になっている無顎類のサカバンバスピスもオルドビス紀に登場した生物。

バージェス動物群の中ではヒーロー扱いされているアノマロカリス。ラディオドンタ類と呼ばれる中の一種だそうです。実物化石が見られます。
そして、大絶滅。O-S境界では寒冷化によって海水準が低下して浅瀬や大陸棚に生息していた生物群に致命的な影響をもたらし、種レベルで80%以上が姿を消したとのこと。
そんな大絶滅の後で繁栄していったのがこのでっかい奴です。ウミサソリの一種のアクティラムスという生物だそうです。ラディオドンタ類とは違って手(?)がハサミ状になっていますね。いかにも肉食だって感じがします。
Episode 2 デボン紀後期に起こった大絶滅は火山活動による寒冷化(火山灰が長期に渡って日光を遮ったために発生)によって起きたもの。かの三葉虫が絶滅してしまった。その後、陸上ではシダ類を中心とした巨大な森が出現し、その光合成活動によって酸素濃度が上昇。それに伴って生物も巨大化したそうです。
アースロプレウラはヤスデの一種。原寸大復元模型が展示されていますが、体長は二メートルにもなったそうです。「風の谷のナウシカ」の世界の生物のようですね。

Episode 3:ペルム紀に反映していたのは、恐竜のような見た目の単弓類。爬虫類である恐竜と異なり、哺乳類に近かったそうです。見た目が恐竜に似ているのは収斂進化によるものですかね。
帆のようなものを持っているのはディメトロドン、もう一方はコティロリンクス。コティロリンクスは身体の割りにとても小さい頭部を持っていて、“肥満体型”だったようだ。何となく親近感が沸いてしまいます。
シベリアで起こった大規模火山活動(P-T境界の原因)と三畳紀後期のパンゲア大陸の分裂(大西洋が出来上がったT-J境界)によって、このあとのジュラ紀、白亜紀では恐竜が地球を席巻するのでした。
かのティラノサウルスのレプリカ全身骨格が堂々と展示されています。その隣は三畳紀のワニ型爬虫類のレドンダサウルス。示準化石になるほど繁栄していたようですが、絶滅して、お隣の恐竜たちにその座を明け渡したのでした。

今や有名になった小惑星の衝突。直径10Kmもあったそうで、直接的なインパクトだけでも半径70~80Kmのクレーターができ、超巨大地震や津波が発生したのでした。そして、その後も塵や煤が何年にも渡って太陽の光を遮り、地球全体で植物の光合成活動が停止してしまったそうです。
そして恐竜は絶滅。しかし、我らがご先祖様の哺乳類は何とか生き延びて今に至るのです。いや、凄いですね。
ただ、大絶滅は発生しなかったものの、その後も寒冷化、乾燥化などの気候変化は続き、生物にも変化(進化)をもたらしていったのです。
その一つが大型化。ホタテ貝とウマの大型化の歴史が化石として展示されていました。
現在、生物の絶滅原因の一つになっているのが我々人間。ステラーカイギュウ(ジュゴンの一種)も三百年前に人間のせいで絶滅してしまったそうです。
これはほんの一例で、我々のせいで消えてしまった種は枚挙に暇がないでしょう。

最後に、化石発掘の現場や化石のクリーニングなどの様子が展示されていました。この企画展に関わった人たちの写真も並んでいてアベンジャーズ感がありました。こういうのを見て子どもたちは「自分でも化石を発掘してみたい!」と夢を持つのでしょう。とても大変な仕事であるのは容易に想像できますが、年寄りの自分でもちょっと憧れてしまいました。

感想

ずいぶん前に「絶滅古生物学」という本を読んで、その恐ろしさとともに、それでも生き残って次の時代に繁栄した連中がいたことに驚いたのでした。
その他にも古生物に関する本は色々と読んでいましたが、そこに出てきた生物の実際の化石をまとめて見られたいい機会でした。サカバンバスピスやらアノマロカリスやらの“有名どころ”もそうですし、各時代の三葉虫やアンモナイトの変遷も興味深いものでした。
平日の午前中に来場したんですが、それでもずいぶんと混んでいました。最近は古生物もキャラクターとして人気になっているし、この企画展でもぬいぐるみや、すみっコぐらしやゾイド(ZOIDS)とのコラボ商品も売られていました。これでは混雑するのも無理はないですね。
でも、展示はわかりやすいですし、古生代からの生物の歴史を概観することもできるし、一見の価値大いにありです。面白かった。
企画展情報
- 会期 : 2025/11/1(Sat) – 2026/2/23(Mon)
- 開館時間 : 09:00 – 17:00 金曜・土曜日は 09:00 – 19:00
- 休館日 : 月曜日、年末年始(12/28 – 1/1), 1/13(Tue)
- ただし、1/12, 2/16, 2/23は開館
- 料金 : 一般・大学生 2,300円、 小・中・高校生 600円
- 公式サイト :特別展「大絶滅展―生命史のビッグファイブ」Special Exhibition: Mass Extinctions―BIG FIVE
- 図録 : 2,800円(税込)
- 音声ガイド : 会場レンタル 650円(税込)、アプリ配信「聴く美術」版 800円(税込)
- アプリ版は会場外でも配信期間中繰り返して聴くことができ、さらにボーナストラックもついているのでおすすめです。
- 音声ナビゲーターは福山雅治。渋い声で説明してくれます。
- 参考書









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