「阿呆浪士」 :忠臣蔵を大胆にリメイク

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映画・演劇
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ネタバレありなので、ストーリーを知りたくない人はごめんなさい。

あらすじ

公式サイトによると、

主役・八を含め、20~30代の若い俳優たちを中心に、青春物語の側面をフィーチャーしておとどけいたします。友だちのためのみならず、他人様のために命をも掛けて闘う馬鹿な男たちの生き様を描くことで、SNSでのコミュニケーションが主になっている現代に生きる(特に若い)観客に対して、“人との関わりを持つことは決して怖いことではなく、素敵なこともあるのだ”というメッセージになればと思います。

演出には、現在の演劇界において、真のエンタテイメントを表現できる屈指の演出家、読売演劇賞優秀演出家賞受賞の実績も持つラサール石井を迎えます。鈴木聡とは『燃えよ剣』『その男』という2本のスケールの大きな時代劇でタッグを組み好評を得ました。

阿呆浪士 | PARCO STAGE -パルコステージ-

とのこと。誰もが知る「忠臣蔵」を大胆にリメイクした、歴史エンターテイメントとなっている。
以下、全体に渡ってネタバレありです。でも、本物の「忠臣蔵」を始めとした歌舞伎作品と同じく、ストーリーを知った上でも充分に、いや、かえって安心して(?)芝居を、歌を、ダンスを楽しめると思います。

時は元禄、場所は江戸。魚売りの八(はち)は口からでまかせばかり言っているお調子者。浪人のスカピンや太鼓持ちの一八とつるんで騒ぎばかり起こしている。
そしてその日も、十年連れ添った女房のお幸がいるにも関わらず、「長屋小町」と呼ばれる(自称?)お直(おなお)にちょっかいを出す。「あんたがもし赤穂浪士だったら惚れたんだけど」とお直に言われた一言を真に受けた八は、ひょんなことから、自分は実は世の中から隠れて江戸に潜伏中の赤穂浪士なのだと大ぼらを吹き出したのだ。

一方、本物の赤穂浪士たちはその頃、仇討ち/討ち入りをやらない・やめると決めた大石内蔵助に対し、娘のすずが討ち入り決行を主張して江戸にまでやってきて言い争いとなっていた。江戸では、討ち入り決行の血判状をまだ手元に持っていたのは田中貞四郎のただ一人。残りの浪士たちはみな、大石内蔵助に返却してしまっていたのだ。
そんな状況を打開すべく、すずが目をつけたのが八だった。

隠れ赤穂浪士だったと街の人々に知れ渡った八は、今や大スター。かわら版屋は連日、彼を追いかけて記事を書いていた。そろそろ潮時かと本当のことを言おうとする八だったが、すずから「彼は本物の赤穂浪士だ。彼と一緒に討ち入りに参加するものは集え!」と”求人募集の広告塔”にされてしまったのだ。早速、遊び仲間のスカピンや一八も赤穂浪士の討ち入りに加わることとなった。
引くに引けなくなった八。そうこうしているうちに、運命の日を迎えてしまうのだった。

討ち入り決行の日、あんなに反対を唱えていた大石内蔵助が翻り、陣羽織姿で現れた。そして、討ち入りを宣言するのだった。彼はなぜ、なんのために討ち入りを決意したのか、そして八たちの運命は。

キャスト&スタッフ

  • 出演 : 戸塚祥太(A.B.C-Z), 福田悠太(ふぉ~ゆ~), 南沢奈央, 伊藤純奈(乃木坂 46), 宮崎秋人, 堺小春, 八幡みゆき, 新良エツ子, 佐藤誓, おかやまはじめ, 松村武, 西海健二郎, おおたけこういち, 辻大樹, 堀田勝, MAEDA, 立川ユカ子, 安川里奈, 木下桜, 玉川奈々福, 竹内都子, 小倉久寛
  • 演出 : ラサール石井
  • 脚本 : 鈴木聡

感想

「あらすじ」はちょっとシリアスに書きましたが、ベタベタのコメディです。しかも、”史実”そっちのけで、赤穂浪士の半分は町人や浪人の寄せ集めだったとか、大石内蔵助の娘が討ち入りに加わったとか(大石主税と同様、裏門からの突撃隊の隊長に任命されます)、当の大石内蔵助は変装のはずだった風車売りのままでいたいと言って討ち入りをやめようとしたりと、なんとも大胆なシナリオ。でも、ちゃんとストーリーとして筋が通っていて、涙あり、笑いありの内容になっているのがさすが。娯楽作品として素直に楽しめました。

ジャニーズの戸塚祥太や、乃木坂46の伊藤純奈などの若手を中心に、歌もダンスも、そして芝居も大胆にパフォーマンスしていて、こちらも気分が高揚してきましたよ。”阿呆”の象徴である役である戸塚祥太がずっとヘラヘラ笑いをしているんですが、あれ、意外と体力いりそう。表情筋が引きつっちゃうんじゃないかと思えるほどの熱演でした。それに、歌もうまいんですね。ダンスもキレキレだったし。なんだかんだ言ってトップアイドル集団のジャニーズの一員、さすがです。後半最初の歌のコーナーでは思わず手拍子しちゃいましたよ。

彼女が出演しているので見に行こうと思った乃木坂46の伊藤純奈もよかった。武士のメンツをかけ、お家の再興を願って討ち入り決行を遂げようとする頑固な娘を、適度な愛嬌を出しつつ演じていた。小倉久寛などのベテランとの絡みのシーンも臆することなく演じ、ストーリーを引っ張っていた姿に感心。

ところで、ラスト近くで田中貞四郎が自害をするシーンのバックで繰り広げられたダンス。あれ、どこかで見たような。映画「愛と哀しみのボレロ」ですかね、あれ。曲調もどことなく似ていたし。ラストに向かうカウントダウン的な意味合いでは確かにぴったりでした。うむ、演出の意図を聞いてみたい。

それにしても、観客の九割り以上は女性でした。私は奥さんと二人だったので良かったけど、一人だったらちょっとビビってしまいそう。そうそう、そのためか、いつもは男性用のトイレも女性用にされ、男性は二階まで行かされるることに。それでも女性用トイレは大行列だったな。

と、そんなこともありますが、とても楽しめた作品でした。おすすめです。

公演情報

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