「琉球弧の写真」展 六十年代・七十年代の沖縄の姿を振り返る

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美術展・写真展
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恵比寿ガーデンプレイスにある東京都写真美術館で「TOPコレクション 琉球弧の写真」展を観てきました。
本企画展では、一部作品(石川真生氏の作品)を除いて写真撮影OKです。ただし、フラッシュ・三脚NGなどのルールがありますので、会場入り口に掲示されている注意点を確認願います。

展示内容

公式サイトによると、

沖縄は、その温暖な気候や風土、古来からの歴史を背景に、独自の文化を育んできました。本展出品作品の多くは、1960年代から70年代の沖縄を撮影したものです。市井の人々の暮らしや、大きなうねりとなった復帰運動、古くから各地に伝わる祭祀などを写した作品は、それぞれの写真家にとって、キャリア初期の代表作となっています。 沖縄に暮らし、沖縄にレンズを向けた7名の写真家の作品には、沖縄のみならず、琉球弧(奄美群島から八重山列島にかけて弧状に連なる島々)全体を見据えたまなざしがあり、様々な角度から、この土地固有の豊かさと同時に、沖縄が直面する困難を写し出しています。

東京都写真美術館

とのこと。

沖縄県を代表する七人の写真家の作品(東京都写真美術館の収蔵品)を展示。沖縄県外の公立美術館ではあまり紹介されることが少なかった写真家の作品をピックアップしての企画展です。

展示構成は以下の通りで、作家ごとに作品が展示されている。全展示作品数は206点。

  • 山田實
  • 比嘉康雄
  • 平良孝七
  • 伊志嶺隆
  • 平敷兼七
  • 比嘉豊光
  • 石川真生

山田實

満州で召集され、戦後はシベリア抑留となり、帰国後に沖縄で写真機店を開業し、自らも写真をとり続けた。

子どもたちの姿を多く残している。戦争の跡が残る、一部が壊れた鳥居などで時代・年代を伺うことができるが、子どもたちの笑顔は屈託がなく、明るい。これからの世界は希望に満ちていると言わんばかりだ。

山田 實
#山田實 #琉球弧の写真 #東京都写真美術館
山田 實
#山田實 #琉球弧の写真 #東京都写真美術館

比嘉康雄

高校卒業後に警察官になるも、沖縄のB-52墜落事件に遭遇し、警察官を辞めて写真家となる。ベトナム戦争や、沖縄返還の激動期に沖縄の姿を写し続けた。

デモに参加する女性たちの、不安と真剣さとが入り交じった表情は、沖縄が直面していた状況を語っているようだ。また、女性も参政権が与えられた、初の国政選挙の様子なども写真に収めている。

比嘉 康雄
#比嘉康雄 #琉球弧の写真 #東京都写真美術館

平良孝七

新聞、テレビのカメラマンの後、返還前の流況政府の広報カメラマンとして写真をとり続ける。その傍ら、自費出版で写真集も刊行している。

公務で訪れた、琉球弧の島々の様子を写したものは、モノクローム作品だが、波間にきらめく光や影が、青い空、紺碧の海を見せてくれている。沖縄の自然は美しいと素直に感じさせてくれるものばかりだ。

平良 孝七
#平良孝七 #琉球弧の写真 #東京都写真美術館

伊志嶺隆

東京写真専門学校で学んだ後、沖縄に戻ってフリーのカメラマンとなる。47歳で事故で亡くなるまでに、琉球弧の島々、特に海を題材に作品を製作していった。

島の祭祀を紹介した作品は、神と人との間がずっと近かったのだと感じさせてくれる。

伊志嶺 隆
#伊志嶺隆 #琉球弧の写真 #東京都写真美術館

平敷兼七

東京工芸大学(旧東京写真大学)、東京綜合写真専門学校で写真技術を学びつつ、早くから作品を発表し、沖縄固有の文化を紹介していった。

南大東島の風俗・風習を撮った作品では、祭りの様子や、墓(?)の前で祈祷をする人々などが被写体となっている。

平敷 兼七
#平敷兼七 #琉球弧の写真 #東京都写真美術館

比嘉豊光

琉球大学卒業後、自主ギャラリー設立に関わりつつ、激動の沖縄を撮り続ける。

延々と続く米軍基地のフェンスや、基地内外の米兵や家族の様子などを撮っている。また、コザ騒動(米兵による交通事故を直接のきっかけに、蓄積されていた米軍への不満が爆発、米軍車両放火などの暴動となった)の跡を写真に残している。

比嘉 豊光
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石川真生

東松照明写真教室で学び、沖縄の女性たちを中心に作品を撮っていく。

ハイビスカスの原生種である“アカバナ”をタイトルにした写真集では、黒人米兵専用バーのホステスとその客たちの姿を捉えている。屈託のない笑顔を見せる女性たちと、これからベトナムの戦地に送られるのだろうか、若い黒人米兵たちはなんともうつろな雰囲気を漂わせていて、そのコントラストが沖縄の一つの姿を伝えている。

感想

初めましての写真家さんばかりでした。“歴史”として断片的な知識しかない沖縄の姿を改めて知った企画展です。

自然の美しさと米軍基地の混在、祭祀に臨む人々とストや反対運動に参加する人たちの眼差し、この対比は次元が異なるものを併置したようで、とても違和感のあるものばかり。でもまさにそれが沖縄の姿であると言うことなのでしょう。

作品は全てモノクロームなのですが、不思議と海や空の蒼さが見えてくるような作品ばかり。沖縄の美しさは普遍的なのでしょう。私は観光で一度しか行ったことがないのですが、確かにきれいだった。色んな歴史や社会問題を抱えているのは知りつつも、とにかくきれいだった。そんな印象通りの沖縄は、昔から変わっていないのだなと思わせてくれた。
そして、数々の問題。美しい自然とはそぐわないと思ってしまったのは、第三者的な見方がどうしても先に立ってしまうからなのでしょう。でも、それも偽らざる気持ち。美しいものはそのままであって欲しいと思ってしまいます。でも、だからこそ色々な問題に向き合って、考えていかねばならないのだとも思えました。表面的な感想になってしまっているけど、理解をするのはなかなかに難しい。。。

200点以上の展示がされているのですが、一枚一枚、じっくり見入ってしまいました。東京都写真美術館、こんな作品群も所蔵していたんですね。

以下、余談。
年間パスポート、正確には今年度下半期分なのかな、を購入しようとしたんですが、「販売期間は九月末まででした」とのこと。買えませんでした。いや、失敗。来年は販売期間を確かめて購入します。
これもデジタル化してくれる(ネットで購入できる、会員証がスマートフォン内に登録される、など)してくれると良いのだが。

写真展情報

  • 会期:2020/09/28 (Tue) – 2020/11/23 (Mon)
  • 開館時間 : 10:00 – 18:00
  • 休館日: 月曜日(月曜が祝日・振替休日の場合は開館、翌平日休館)
  • 料金 : 一般600円 学生 480円 中高生・65歳以上 300円 小学生以下および都内在住・在学の中学生は無料
  • 公式サイト : 東京都写真美術館
  • 図録 : 3,300円(税込) TOPコレクション 琉球弧の写真

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