「MINAMATA」写真が訴える力は大きい

MINAMATA 映画・演劇

★ あらすじ

第二次大戦の戦場カメラマンとして沖縄で重症を負うも、再起してのちに数々のフォト・エッセイを発表、アメリカを代表するカメラマンの一人となっていたユージン・スミス。だが、それも昔の話。写真雑誌のLIFEも経営難になるような時代になり、彼は酒に溺れるようになった。

そんな時、CMの仕事で知り合ったアイリーンから「日本の水俣で起きている事を写真に撮り、世界に訴える手伝いをして欲しい」と頼まれる。ユージン・スミスは使命感を感じ、盟友であるも渋るLIFEの編集長を説得し、なんとか日本へ取材旅行に行けることとなった。

水俣の人びとは温かくユージン・スミスとアイリーンを迎え入れてはくれたが、家族の恥との思いからか写真撮影には非協力的だった。彼は慌てない。ある家族と時間を共にし、抗議運動の人びととも交流を持ち、水俣病を負った少年にも誠意と敬意を持って接していく。そして、チッソ工場の社長とまで直接に会って話を聞いていったのだ。

そんな彼の姿を見て、街の人々もだんだんと彼を受け入れていく。そして、(水俣病を患っている)家族の写真を撮ることを承諾してくれていった。
だが、一方でチッソ工場側の圧力も高まってくる。買収工作や暴力的な妨害もされるようになり、抗議運動の騒動の現場では大けがを負ってしまうのだ。

心折れ、取材を断念して帰国することまで考えるようになってしまったユージン・スミス。だが、彼を叱咤激励したのはLIFEの編集長だった。彼は再び、カメラを手にする。

★ キャスト&スタッフ

  • 出演:JOHNNY DEPP, 真田広之, 國村隼, 美波, 加瀬亮, 浅野忠信, 岩瀬晶子, BILL NIGHY
  • 監督:ANDREW LEVITAS
  • 脚本:ANDREW LEVITAS, DAVID K. KESSLER, Stephen Deuters, Jason Forman
  • 音楽:坂本龍一

★ 感想

2017年に東京都写真美術館で開催された「生誕100年 ユージン・スミス写真展」を観ましたが、そこで「水俣」シリーズを何点か初めて目にしました。「カントリー・ドクター」シリーズと同様に、被写体の姿をそのままに伝えようとしている作品に、報道写真とはまた違うものを感じられたのでした。

その話が映画化されたと言うことで、公開を楽しみにしていた作品でした。

「事実に基づいた作品」だと冒頭にテロップが流れますが、それよりも各シーンでユージン・スミスが写真を撮るわけですが、その「出来上がり作品」として映画用に撮られたものだけではなく、実際に彼が撮った写真も映されます。それぞれ、数秒もないかもしれないけど、本物の力は大きいなと感じさせる演出でした。

「入浴する智子と母」は、水俣病の娘を抱きかかえて入浴させる母親との姿を写した作品ですが、そのエピソードも映画で描かれています。この作品の背景にあるストーリーはこんなのだったのかもしれないと思わせてくれた。ピエタ像を彷彿させる母娘の姿はやはり胸を打つものがありました。

俳優陣の演技が良かった。中でも國村隼演じるチッソ社長。ユージン・スミスを金で買収しようとしたり、妨害工作も(たぶん)させたりと、いわゆる悪役。でも、良心の呵責による苦しさを押し殺しているような、そんな複雑な表情を見せてくれます。
浅野忠信も出番は少ないながら、水俣病に苦しむ娘を抱えつつ、自分はチッソ工場のトラック運転手として働いているという辛い立場にある父親を、朴訥な演技で語ってくれている。
いや、みんな素晴らしい。

ドキュメンタリーではないので、色々と脚色はあるのでしょうけど、そんなことを差し引いても素直に訴えてくる作品でした。「写真を撮られると魂を抜かれると信じられていたが、写す側も魂を削られる(無傷ではいられない)」というセリフが心に残ります。ユージン・スミスは水俣に三年間滞在して取材をしたそうですが、写真家と被写体、共感することが互いにできるようになるにはそれだけの年数が必要だったのでしょう。

賛否両論あるようですが、私は観てよかったなと思える作品でした。

★ 公開情報

★ 参考書、他

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