智美術館 「第11回菊池ビエンナーレ 陶芸の現在」展

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「第11回菊池ビエンナーレ 陶芸の現在」展 美術展・写真展
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菊池寛実記念 智美術館でSNSユーザー向け「第11回菊池ビエンナーレ 陶芸の現在」展鑑賞イベントに参加してきました。
特別な許可をもらい、写真撮影しています。

展示内容

「菊池ビエンナーレ」とは

菊池寛実記念 智美術館は現代工芸専門の美術館。そして、二年に一度開催しているのが現代工芸作品の公募展である「菊池ビエンナーレ」展です。今回はその十一回目で、452点の応募があり、そこから46点が入選、さらにその中から大賞1点、優秀賞 1点、奨励賞3点が選ばれました。この企画展ではその入選作品が展示されています。
今年は条件を変えたことで海外からの応募がやり易くなったそうで、結果として国外33か国から86点が出品され、入選14点、さらには入賞も3点(優秀賞 1、奨励賞 2)が国外からの応募作品となったとのこと。

前回、第十回の模様は下記記事を参照してください。

入賞作品

大賞:中根 楽《境界の思考》
“用の美”として器であることは陶芸の基本(の一つ)かも知れない。一方で、純粋に鑑賞対象であるオブジェとしての陶芸作品もある。作者はその境界がどこにあるのかを追求しているのだそうです。これ、見ての通りに岩石のような見た目をしていて、とても重たそう。それでいてちゃんと真ん中は窪んでいて何かを入れることができる。さて、これは器?それとも純粋なオブジェ?

「第11回菊池ビエンナーレ 陶芸の現在」展

優秀賞:へルミ-・ブルグマン《David XVIII》
型から各パーツを作り、それを組み立てる。そんな“人形”を何体も作成する。これはその18番目。型から作っているから基本はみな同じ形。だけど、個々に“欠落”した部分がある。それがアイデンティティになっているようだ。

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奨励賞:ダニエル・チャウ《Narrative》
“Narrative”とは「物語」「説話」「語り」と言ったような意味。轆轤で成型しながらも手でそれぞれに模様を作っている。学芸員さんの説明によると、「組み作品は(賞獲得が)難しい」そうです。なぜ三つなのか、四つじゃダメなのか。それぞれにどのような意味があるのか、などを表現しなければならないからだそうです。なので、この展示も位置関係や向きはこれじゃなきゃダメらしいです。

「第11回菊池ビエンナーレ 陶芸の現在」展

奨励賞:レイ・ブラウン《Gourd Vase》
壺や花瓶として使えるものであり、使う人に心の安らぎを与えてくれる作品となっています。瓢箪型のボディと、それに合わせたような色合い。それでいて釉薬が作る偶然の紋様が重なり合っています。

「第11回菊池ビエンナーレ 陶芸の現在」展

奨励賞:石田和也《備前磁器壺》
備前焼というと“陶器”のイメージがあるが、作者は同じ備前焼の粘土を使って磁器を作成している。これは、粘土といいながら土に粗い粒子や鉱物が混ざっているから可能なのでしょう。そんな「土作り」に作者は拘っているのだとか。

「第11回菊池ビエンナーレ 陶芸の現在」展

入選作にも面白いものが一杯

海外からの入選が多かったせいでしょうか、これまでの菊池ビエンナーレでは見られなかった感じの作品が多かった印象です。いやぁ、陶芸っていう表現方法はまだまだ可能性が尽きないんですね。

マルタ・アルマダ 《Cartography》
子どものオモチャのようでもあり、カラフルな食器のようでもある、不思議な作品。フニャフニャしている部分ももちろん陶器なので、焼成の際にこんな形が生まれたそうです。

「第11回菊池ビエンナーレ 陶芸の現在」展

兼行誠吾 《青の線》
くっ付いていれば普通の(?)器なんだろうけど、底が抜けている。それでいて、釉薬によって枠部分と底の円盤が部分的に繋がっていて、自立しています。とにかく目を惹く作品。

「第11回菊池ビエンナーレ 陶芸の現在」展

酒井智也 《Archē series “Barune & Cereth”》
学芸員さんも「エヴァンゲリオンの使徒に見える」と言っていましたが、もちろんそう言う訳ではない。脚(?)が三本なので動物でもなさそう。パレイドリア現象で、どうしても生き物に見えてしまいますね。

「第11回菊池ビエンナーレ 陶芸の現在」展

井上智映子 《Musang》
“Musang”って「ジャコウネコ」って意味だと思うけど、これは猫? 石を積むって、どうしても供養塔を想起させる。もちろん、これらは石ではなくて陶器。しかもひび割れている。さらにはこのひび割れは進行中だそうで、その変化(崩壊?)過程も含めての作品なんだとか。供養の心も風化していく、という隠喩か?

「第11回菊池ビエンナーレ 陶芸の現在」展

髙橋謙輔 《偽果11》
トライポフォビアの人にはおすすめできない作品。偽果とは花托(萼など花の要素がついている茎の部分)など子房(雌しべにおいて胚珠を包んでいる部分)以外に由来する構造が大部分を占めている果実のこと。リンゴやイチゴ、ハスなどが偽果だそうです。
申し訳ないが、やっぱり気持ちが悪い!

「第11回菊池ビエンナーレ 陶芸の現在」展

マリーユージー・コメロ 《One Day》
新製品のマットかと、パッと見た時に思っちゃいました。でも、よく見るとなんとも複雑な形のパーツが微妙なバランスで組み上がっているんです。決してマットのコイルじゃないですよ。もちろん陶器ですから。。。
学芸員さんたちが三人がかりで三日かけて組み上げたそうです。いや、展示するのも大変な作品だ。

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感想

ぶんじん
ぶんじん

急に国際色豊かになった、今年の菊池ビエンナーレ展でした。うれしいことに毎回、特別鑑賞会に参加させてもらっているんですが、今回はこれまで以上に面白かった。サブタイトルに「陶芸の現在」とありますが、陶芸の多様性は凄いものがあります。どうやって作っているの?って作品はこれまでにも一杯ありましたが、今回は「これ、どういう意味?」「これ、何なの?」というものが今まで以上に一杯。単純にきれいだなぁと思うものもあれば、見ていて気持ち悪くなるものまで。。。それ故に、見る人が見たいように見られる、意味を見いだす(いや、見いださなくてもいい)ことができる作品たちなのでしょう。とにかく、自分の目で実物を見てください。質感も感じながら見るべき作品ばかりです。

ちなみに、私的なベスト作品は「青の線」です。あの微妙なバランスと色合いがとにかく目を惹き、これだ!と思っちゃいました。

美術展情報

  • 会期 : 2025/12/13(Sat) – 2026/3/22(Sun)
  • 開館時間 : 11:00 – 18:00
  • 休館日 : 月曜日 (月曜日が祝日の場合は開館し、翌火曜日が休館日),12/28-1/1, 1/13,2/24 (ただし、1/12, 2/23は開館)
  • 料金 : 一般1,100円、大学生800円、小・中・高生500円
  • 公式サイト : 最新の展覧会|展覧会|菊池寛実記念 智美術館
  • 図録 : あります(値段、チェックし忘れました。。。)

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