「世界報道写真展2021」 対立・分断・紛争の絶えない世界

世界報道写真展2021 美術展・写真展

恵比寿ガーデンプレイスにある東京都写真美術館で「世界報道写真展2021」展を観てきました。

展示内容

The World Press Photo Foundationが主催する報道写真コンテストの入選作を展示する企画展。毎年、行われている。

公式サイトによると、

第64回目を迎える今回は、130の国と地域のフォトグラファー4,315人から計74,470点の応募がありました。展覧会では、厳正な審査を経た約150点の入賞作品を紹介します。

入賞者は部門毎に各1位から3位までのいずれかに該当し、入賞者の中から、その年の最も優れた作品に対して「世界報道写真大賞」「世界報道写真ストーリー大賞」が贈られます。今年は世界報道写真大賞にマッズ・ニッセン氏(デンマーク、ポリティケン/パノス・ピクチャーズ)の作品「初めての抱擁」が選ばれました。新型コロナウイルスと闘っている人間の絆と温もりが撮られており、人々に勇気を与える1枚です。

東京都写真美術館

とのこと。

今年のコンテストは以下の八部門。展示もほぼ部門ごとに別れている。
130の国・地域から、四千人を超える写真家の作品74,470点の応募があり、約160点が入賞している。
そして部門を越えて、その中から世界報道写真大賞と世界報道写真ストーリー大賞が選ばれている。

  • 現代社会の問題
  • 一般ニュース
  • 環境
  • 自然
  • 長期取材
  • スポーツ
  • スポットニュース
  • ポートレート

世界報道写真大賞を受賞したのはチラシにもなっている一枚。COVID-19のパンデミック下では介護施設でも感染予防のために人と人との接触が避けられていた。そんな中、防護シート越しだが何ヶ月かぶりに看護師に抱きしめられた入居者の老婆の姿を写したものだ。

もう一方の世界報道写真ストーリー大賞をとったのは、イスラエル側に逮捕され、刑務所に長期に渡って収監されているパレスチナ人の夫を待つ妻を追ったもの。数十年に渡って拘禁されているため、その間に密かに夫は自分の精子を妻に届ける。そして妻は体外受精で子どもをもうけ、育てているのだ。両国がミサイルやロケット弾を打ち合い、殺し合いを続けているその背景が見えてくるようだ。世代を超えた憎悪の連鎖と言えよう。そんな憎しみが消える時は来るのだろうか。

自然と環境の部門では、(地球温暖化が理由と思われる)異常気象による各地の様子を伝える作品が入賞している。
ケニアでは湖の洪水によって “島” となった土地に取り残されたキリンを助け出す様子を撮ったもの。またインド北部のラダックでは、乾期の干ばつを乗り切るために冬の間に氷河の水を凍らせて氷の塔を作っておく様子を撮ったもの。
気候変動に対応するため、新たな取り組みが各地で行われているのだ。

その他、インドで起きた宗教上の対立による破壊行為の跡や、(未だに)大量の武器を所有している米国の “普通” の人びとや、IS(いわゆるイスラム国)に誘拐されていた女性など、世界の各地で起きている争いや分断、憎悪、悲しみを捉えた作品が展示されている。

感想

2020年はCOVID-19のパンデミックが世界中を席巻した(している)年だったが、世界のあちこちでは相変わらず人々の争い、憎しみ合い、分断が起きている。戦争・紛争は各地で起きていているし、子どもが武器を持って訓練を受けなければならない状態も続いている。
また、地球温暖化のため(と思われる)異常気象によって地球の自然自体が大きく変化してしまい、自然災害が頻発している状態だ。干ばつや山火事に、蝗害まで起きている。
そんな特別なことがなくても、人は病気になるし、やがて死ぬ運命にある。動物を使ったセラピーの様子を写した一枚は、痩せ細った母親と、彼女に寄り添う息子(?)の姿がそれを思い出させてくれた。
報道写真はそんな悲惨な状態を伝えてくれている。報道写真展を毎年観るたびに思っているのだが、争いが世界からなくなることはないのだろうか?今年もまた、観終わったあとにどんよりとした気分になってしまった。

と言いながら、毎年、必ずこの「世界報道写真展」は観ている。苦行のようなものだが、やはり “忘れてはいけないもの” がそこにあるからだろう。普段の生活で忘れてしまっているものを思い起こさせてくれるのがこの企画展だ。
日々、大量のニュースがTVやネットを通して流れている。昨日のことどころか、朝のニュースで何を見たのかさえ、夜にネットを見る頃には忘れてしまい、新たなニュースで頭が上書きされている状態だ。だからこそ、こうやって写真を一枚ずつ、じっくりと観て世界の出来事を再確認するべきなのだろう。

おすすめの企画展です。


以下、蛇足。

そんな中、大賞をとった作品は正直、ハグの習慣の薄い私にはピンとこないものがあった。理解はできるが、「ああ、寂しかったんだねぇ」とか「よかったね」とはそれほど思えないものだった。人が死んだり、苦しんでいる様子は素直に感情移入できるのだが、感動を伝えているはずの一枚に共感できないとは。。。文化・習慣の違いから来るものなのだろうが、改めて「多様性の受容」だの「ダイバーシティの尊重」だのってのが難しいものなのだなと思えた。それなりに多様性には理解があるつもりだったけど、こんなところで大きな隔たりを感じるとは思わなかった。
写真展の本来の主旨とは関係ないかも知れないが、自分にとってはこれも良い勉強になったのではないかと思う。

写真展情報

  • 会期:2021/06/12 (Sat) – 08/09 (Mon)
  • 開館時間 : 10:00 – 18:00(木曜日、金曜日は20:00まで))
  • 休館日: 月曜日
  • 料金 : 一般1,000円 学生 800円 中高生・65歳以上 600円 小学生以下および都内在住・在学の中学生は無料
  • 公式サイト : 世界報道写真展2021
  • 巡回先 :
    • 2021/09/20(Mon) – 10/15(Fri) 立命館大学 びわこ・くさつキャンパス エポックホール
    • 2021/10/18(Mon) – 10/31(Sun) 立命館大学 西園寺記念館 1階カンファレンスルーム
    • 2021/11/05(Fri) – 11/19(Fri)立命館アジア太平洋大学
  • 図録 : 2,800円(税別)
  • 参考書 : 英語版図録(写真集)はAmazonなどから購入できます。

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