東京都写真美術館 『複製される感性 森山大道』展 :キュレーションというクリエーション

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複製される感性 森山大道 美術展・写真展
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恵比寿ガーデンプレイスにある東京都写真美術館で「複製される感性 森山大道」展を観てきました。

展示内容

公式サイトによると、

本展覧会は、森山大道写真財団のご協力により、2025年に入江泰吉記念奈良市写真美術館で開催された「複製される感性 DAIDO MORIYAMA by NWU Nagatani Lab. Monika Orpik」をもとにした巡回展です。今回は、同展の展示作品に加え、東京都写真美術館が収蔵する森山大道作品を、奈良女子大学の学生がそれぞれの視点で選定し、約140点を再構成して展示します。森山大道の写真が次世代の感性にどう受け取られ、AIやデジタル技術を通じてどのような表現へと展開されるのか、その可能性を探ります。

とのこと。

展示構成は以下の通り。

  • A. 《三沢の犬》1971年の複製、2026年 / 《三沢の犬》1971年
  • B. 森山大道ポートレート
  • C. 『光と影』(1982年)より
  • D. 写真集(『にっぽん劇場写真帖』『狩人』『写真よさようなら』)より
  • E. プリズム(2026年)
  • F. 『光と影』(1982年)より
  • G. Silhouette(2026年)
  • H. 『狩人』(1972年)より / The Photographer
  • I. The world of DAIDO MORIYAMA shown by AI(2025年)(Midjourneyを用いたAI生成映像・壁紙作品)
  • J. 『写真よさようなら』(1972年)より
  • K. まだ見ぬ記録(2026年)(収蔵作品データをもとにAIで生成した映像作品)
  • L. TOKYO CUBE(2026年)(『新宿』『上野』『有楽町』など東京の写真作品とミクスト・メディア)
  • M. 残像(2026年)(〈櫻花〉シリーズ等の彩色作品およびゼラチン・シルバー・プリント)
  • N. Copy/Scatter(2025年)(プリンターを使用した作品)
  • O. 継ぎ目(2026年)(ミクスト・メディア作品)

森山大道と言えば「Stray Dog」。1971年の作品。オリジナルは右の写真。犬の顔が左側のやつ。ここでは反転させたものを並べ、犬同士がにらみ合っているようにも見える展示になっています。元は写真家を睨んでいる姿なのに、この二頭(?)の睨み合いの間に入った仲裁者のような形に鑑賞者の立場が変化した感覚になります。

複製される感性 森山大道

透明なアクリル板に写真を印画し、それに光を当てて白いバックに投影したもの。
本来、光を印画紙に写し取るのが写真だけれど、ここではその光によって新たな像を生み出している。

複製される感性 森山大道

森山大道はこれまでに三万点以上の作品を生み出しているそうで、今も精力的に撮影をして、その数を増やしている。そんな膨大な数の中からどのように選び出して並べ、展示するかはとても難しい。いわゆる「キュレーション」という行為は、「なぜ今、これらの作品を見せるのか」というコンセプトはもちろん重要ですし、額装にするのかどうなのかといった物理的な設計もしなければなりません。

複製される感性 森山大道

写真をルービックキューブにしてしまった展示。各面には異なった作品が印刷されている。これをいつものようにクルクルと回すと、各作品がバラバラに再構成され、新たな何かがそこに見えてくるのかもしれない。

複製される感性 森山大道

写真をTシャツに大きく印刷したものはよく見かける。だけど、これは二人が着て、いつも一緒に行動するということ?
実用性があるように見えて、実は純粋に展示にしか使えない、なんとも歯痒い思いがする。

複製される感性 森山大道

森山大道が学生たちから受けた質問に答えている「書簡集」の一部が記されていた。

  • 問い: スマートフォンで誰もが写真を撮る時代をどう見ていますか。
  • 答え: とても良い、素晴らしいことだと思う。
  • 問い: 若い写真家や学生へ伝えたいことはありますか。
  • 答え: とにかく撮れ、いっぱい撮れ。
複製される感性 森山大道

感想

複製される感性 森山大道

写真展って、それぞれの写真家の作品を観ることがもちろん主たる目的ではあるでしょう。と同時に、それら作品を選んで展示したキュレーターの意図も同時に観る(考える)ことになるんだなと改めて実感した企画展でした。
東京都写真美術館でも収蔵品からキュレーターが作品を選び出し、毎回異なったテーマ・コンセプトで収蔵品展を行っています。この日も『TOPコレクション 明日の食卓』展が開催されていました。収蔵品展では同じ作品が使われることも多いのですが、毎回異なったテーマの元に展示されるので、その作品の持つ意味合いが変わって見えます。それがまさにキュレーターの狙いなのでしょう。

非常に個性の強い森山大道の作品をどのようにキュレーションするのかって、かなり難しそう。それを奈良女子大学工学部の学生たちが挑戦したのがこの企画展で、「工学部」の学生ってのがまたまた面白いところ。もしかしたら写真の原理に関わる光学や、印画のための化学反応については知っていたのかもしれないけど、どういう発想で今回のキュレーションを行ったのか聞いてみたかったですね。
実は、その学生さんたちによるギャラリートークがあったそうなのですが、残念ながらそれには参加できませんでした。学芸員・キュレーターによるギャラリートークはこの東京都写真美術館でもよく行われていますが、今回は是非とも学生さんたちの話を聞きたかったなぁ。

正直に言うと、森山大道作品はこれまでもちょこちょこ観てきていたので、この企画展も入る前はそれほど興味を持っていませんでした。でも、そんな先入観はやっぱりいかんですね。面白かった。色んな人の異なった感性によるキュレーション、とても刺激的でした。

写真展情報

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