「永遠のソール・ライター」展:数十年も自分のスタイルを貫いた伝説の写真家

美術展・写真展

渋谷のBunkamuraで開催中の「ニューヨークが生んだ伝説の写真家 永遠のソール・ライター 」展を見てきました。

展示内容

前回の回顧展以来、人気が急上昇中(少なくとも私の中では)のソール・ライター(Saul Leiter)。その後、Saul Leiter Foundationによって未公開作品の整理が進んでいる最中。今回、その“途中経過”の成果として日本初公開となる作品も含め、二度目の開催となった。
公式サイトによると、

2017年、Bunkamura ザ・ミュージアムで日本初の回顧展を開催し、大きな話題を呼んだ写真家ソール・ライター(1923-2013)。(中略)
約8万点のカラー写真をはじめとする作品の大半を整理することなく世を去った写真家の「発掘作業」は今もなお、現在進行形で続けられています。 本展では、ニューヨークの膨大なアーカイブから、世界初公開作品を含むモノクロ・カラー写真、カラースライド等の作品をはじめ、豊富な作品資料やデジタル技術を駆使して、知られざる一面を紐解きながらソール・ライターの更なる魅力をご紹介します。

ニューヨークが生んだ伝説の写真家 永遠のソール・ライター | Bunkamura

とのこと。
展示構成は以下の通り。

  • Part Ⅰ ソール・ライターの世界
    1. Black & White
    2. カラー(1)
    3. ファッション
    4. カラー(2)
  • Part Ⅱ ソール・ライターを探して
    1. セルフ・ポートレート
    2. デポラ
    3. 絵画
    4. ソームズ
    5. その他

子供の頃から絵画を描くことが好きだった彼は、十二歳の頃、母にカメラを買ってもらう。妹のデボラをモデルにしてその頃から多くの写真を撮っている。そして二十代で単身、画家になるべくニューヨークを目指した。ニューヨークでの彼は、絵を描くとともに写真撮影も本格的に行っていく。それは生活のためでもあった。画家を目指しつつ、商業写真家としてファッション誌のアート写真を撮ることを生業とする。
スタジオを構えるまでになった彼だったが、1980年代になると商業写真に嫌気が差したのか、自分だけのための写真を撮りたいとスタジオを閉ざしてしまう。そして好きな作品作りへと没頭していった。

ニューヨークの街並みを、モノクロームのフィルムで写した作品群は、まさにソール・ライターの世界。ショー・ウィンドーに写る街並みや、逆にカフェの室内から雨に濡れる窓越しに外の景色を写した作品は、普段の見慣れた景色を一変させる。

元々、画家を目指していた彼。独特の色彩感覚を持っていて、そんな作品群も今回紹介されている。そして、その感性は彼のカラー写真の作品にも発揮されている。商業写真として撮ったファッション誌のための作品も、そしてモノクローム同様にニューヨークやローマの街角を撮った作品も然り。窓ガラスや大理石(?)の壁に、赤信号だったり、黄色の看板だったりがピンボケで写っている作品は、街角の景色よりも色が主役のよう。

今回の企画展ではプライベート感の強い作品群も多数展示されている。セルフ・ポートレートや、妹のデボラをモデルにした作品、ファッション誌の撮影で知り合い、彼女が亡くなるまで付き合いの続いたソームズの写真などなど。知られざる彼の内面をも伺い知れる企画となっている。

感想

私も前回のBunkamuraザ・ミュージアムの回顧展でソール・ライターを知った一人。二回目である今回の企画展、チケット前売りが始まったらすぐに購入したほど期待してました。前回の写真展でファンになっちゃいましたよ。彼の作品はとにかくカッコいい。窓越しに見る街の景色や、ショー・ウィンドーの中の商品と、そこに映る通りを歩く人々の姿。多重露光のような作品は、重層的に街や人を写し取り、街角のスナップ写真なのに、深層心理を好かし見ているようなそんな感じがする。

今回、コンタクトシート(繋がったフィルムをそのまま現像したもの。今で言えばインデックス用縮小イメージ、という感じ)も多数展示されている。何気ない雰囲気で撮られた作品が、“一発勝負”のものだったのか、何枚も撮影して作り上げていったものか、その一端が知れる。それらを見ると、同じシーンは三、四枚しか撮っていない。あの一瞬を捉えていたのはやはり彼の感性のようだ。前回の写真展を観たあともそうだったが、すぐに真似したくなるんだけど、なかなかあんな風に撮れない。ショー・ウィンドーを覗き込んで良さそうなシーンを捉えようとするんだけど、難しい。さすがです、ソール・ライターさん。

そう言えば、今回の企画展では1950年代の作品と2000年代のものが並んで展示されていた。バス越しの風景と、タクシー越しの風景。その作風が数十年の隔たりを全く感じさせないほどだった。キャプションをちゃんと見なければ同時代の作品と見間違えてしまいそう。もちろん、新しいものはカメラやフィルムの進化の分だけ色は鮮やかで粒子も細かい。でも、作品の持つ雰囲気や、作者の”視線”は全く同じなのだ。あの一瞬を捉えた作品群は、天性の感性とともに、これだけ長く撮り続けていたからでもあるんだなと納得。

あと、画家としての作品(絵画)はなんとも鮮烈的。色が溢れてます。モノクロームの作品を観たあとだとそのギャップに驚きました。
一箇所だけ、そんな作品群を写真に撮れるコーナーがあるので記念写真に良いかも。残念ながらこの椅子には座れませんが。

「永遠のソール・ライター」展

カタログ代わりに写真集がまた出版されてます。下記を参照してください。私も買っちゃいました。これを見て、カッコいい写真を真似しなければ。とりあえず、カフェに入ったら窓際の席を選ぶところから始めます。

美術展情報

上記の「参考書」は、前回企画展の“図録”。今回の図録もそうですが、図録と言うよりは写真集と言った方が良いかも。解説はほとんどなく、作品をそのまま楽しめる形になっています。

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