「マイスモールランド」 日本の難民受け入れ問題を問う作品

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マイスモールランド 映画・演劇
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シネマカフェ cinemacafe.netのオンライン試写会で鑑賞しました。

以下の内容は、いわゆる「ネタバレ」を含んでいます。

★ あらすじ

サーリャの一家はクルド人。父親が独立運動に参加したことで国を追われ、日本に逃れてきた。母親は亡くなっていて、サーリャ、父、妹、弟の四人暮らし。幼い時に日本にやってきたが、サーリャはもう17歳の高校生となっていた。埼玉県の公立高校に通い、教師になるべく大学受験を控えていた。埼玉にはクルド人のコミュニティーができていて、そこではクルドの伝統と文化が受け継がれている。サーリャの一家も、食事時には必ず祈りを捧げている。
だが、日本で育った妹、弟は日本語しか話せない。方や、父親の日本語は片言。サーリャがクルド語と日本語のバイリンガルなので、家族の、そしてクルド人コミュニティーの通訳をし、面倒を見ている。

サーリャは、自分がクルド人であることを学校の同級生たちには隠していた。自分をドイツ人だと偽っている。子どもながらにそう言った方がよいと分かっていたのだ。
そんな彼女は大学進学のための資金を貯めるべく、家族に内緒で川向こうの東京のコンビニでアルバイトをしていた。そこで知り合った同じ歳の聡太にだけは本当のことを話せ、十七歳の女の子らしくいられるのだった。

だが、難民認定が認められないと決定した時から全てが変わってしまった。ビザも取り上げられ、父は仕事を辞めねばならなくなり、家族全員が県境を越えての自由な往来が禁止されてしまったのだ。サーリャの大学進学の夢はどうなってしまうのだろうか。そして家族のこれからはどうなるのか。

★ キャスト&スタッフ

  • 出演:嵐莉菜, 奥平大兼, アラシ・カーフィザデー, リリ・カーフィザデー, リオン・カーフィザデー, 韓英恵, 吉田ウーロン太, 板橋駿谷, 田村健太郎, 池田良, サヘル・ローズ, 藤井隆, 池脇千鶴, 平泉成
  • 監督:川和田恵真
  • 脚本:川和田恵真
  • 制作:河野聡, 小林栄太朗, 潮田一, 是枝裕和, 依田巽, 松本智
  • 音楽:ROTH BART BARTON

★ 感想

日本の難民受け入れの問題に関しては、「入管の体制不備を指摘 スリランカ女性死亡で最終報告:朝日新聞デジタル」や、ウクライナからの避難民受け入れを通して、改めてクローズアップされている。難民認定される割合が、カナダは50%、アメリカが23%、イギリス40%に対して、韓国と日本は0.3%(日本の難民認定制度|認定率の世界比較と認定以外の難民問題の解決法|国際協力NGOワールド・ビジョン・ジャパンを参照)。おなじ難民条約を批准している国でもこれだけ受け入れ実態は異なっているわけだ。

さらに、難民認定されなかった場合がさらにひどいことになる、というのをこの映画で初めて知った。お恥ずかしい限り。日本に留まることはできても、県境をまたいでの自由な移動はNGで、仕事にも付けない。さらにはビザがないから学校にもいけない。諦めて自分から「出ていく」と言わせるがための措置としか思えない。

また、日本人が“外国人”に対してしてしまう「悪意のない差別」のシーンもこの映画で描かれている。「日本語が上手ですね」や「いつか国に帰るんだよね」とか、白人とそれ以外の人種に対する態度の違いとか。自分にも友人に対してそんなことを言ってしまった苦い思い出があるので、観ていて悔恨の情が蘇ってきた。

そんな日本の状況だから、この作品もハッピーエンドとはならない。この先、さらに辛い未来が主人公に待っているのだろうかと思わされて終わる。“同情”の涙でさえはばかられる。とにかく切なく、胸が苦しくなるほど。でも、見ないといけない作品だろう。

主人公のサーリャを演じた嵐莉菜さんはモデルが本業とのことだが、難しい役を演じきっていた。理不尽としか言いようのない状況に置かれた苦悩と、それでも前を向くという力強さが伝わってきた。いわゆる「眼力」というやつだろうか。意思の強さを感じさせ、サーリャという役にぴったり。演技を続けていくのかわからないが、今後の活躍にも期待したい。

★ 公開情報

★ 原作本、他

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