「野口里佳 不思議な力」展 あちこちに不思議が溢れているんだな

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野口里佳 不思議な力 美術展・写真展
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恵比寿ガーデンプレイスにある東京都写真美術館で「野口里佳 不思議な力」展を観てきました。

この企画展では一部作品に限って写真撮影OKです。対象作品を確認して撮影してください。
また、三脚・フラッシュNGなどの注意事項にも従ってください。

展示内容

公式サイトによると、

写真と映像、ドローイングによって構成される本展は、初期作品〈潜る人〉(1995年)から最新作〈ヤシの木〉(2022年)までを出品作品に含み、時間や場所も超えていく写真の「不思議な力」に導かれるように、野口がこれまでに出会ってきた様々な現象や光景が描き出されます。その独自の作品表現に触れることは、それぞれの存在がこの世界に生きていることの意味を見つめ直し、また写真・映像のもつ「不思議な力」とは何なのかを考えるきっかけとなることでしょう。

東京都写真美術館

とのこと。

展示構成は以下の通り。これまでに発表した作品がシリーズごとにまとめられています。

  • 不思議な力
  • 父のアルバム
  • クマンバチ
  • 夜の星へ
  • 潜る人 / 海底

最初の「不思議な力」のコーナーのみ、撮影可能です。

ガラスのキューブを通った光と影。たぶん、同じキューブなのでしょうが、角度によって色合いや影が変わって見えます。光の不思議な力ということかな。

野口里佳 不思議な力

スプーンから垂れる雫。でも、落ちそうで落ちない。先端が膨らんだその形状が面白い。
表面張力と重力とのせめぎ合いによってできた、ありふれているけれども、よくよく考えると不思議な形。

野口里佳 不思議な力

他にも、磁石と砂鉄でできた不思議な文様や、水に沈むでもなく浮くでもない微妙な位置に留まるボール(卵?)などの作品が並びます。

野口里佳 不思議な力

不思議な玉(卵?)の実物も展示されていました。塩などを溶かして水の比重を調整しているのでしょう。
などと、謎解きを考察しつつ観るのも良いし、そんなことは関係なく、単に「不思議だけど綺麗だなぁ」と眺めるも良し。大きく引き伸ばされ、インクジェット印刷された作品群は光の加減がきれいです。

野口里佳 不思議な力

「父のアルバム」シリーズは、作家の亡き父親が残したネガフィルム(OLYMPUS PENで撮影したハーフサイズの写真)を現像、プリントしたもの。奥さん(作家の母親)と旅行に行った時なのか、互いに撮りあったと思われるポートレートや、生まれたばかりの赤ちゃん(作家本人)など。そしてどこで撮られたかはわからないけど、薔薇の写真が並ぶ。どれも発色良く現像されていて、ポジフィルムで撮ったような色合いだ。被写体とも相まって、懐かしさもあった。
そして、父親の目線を辿るという、不思議な感覚もまた面白い。作家の父親がどんな人かは知る由もないが、その人の見たものを追体験するという、写真の持つ面白さを感じさせてくれた。

「クマンバチ」のコーナーでは、題名の通りに路上を飛んでいるクマンバチを写したものや、どこからか垂れ下がって目の前でブラブラしているアオムシ、蜘蛛の糸に絡まって、これまたゆらゆらと揺れている浮遊している枯れ葉などの作品が並ぶ。
目の前に急に現れるこいつら。それまで気づかずにいたのに、見つけた途端にそこに目の焦点が合ってわっと驚いてしまう。そんな突然の出会いと、見つめて観察せずにはいられない存在感がよく表れている。

感想

作家の野口里佳さんは1996年「写真新世紀」展でのグランプリ受賞者とのこと。それなのに、これまで知らずにいました。相変わらずの、自分の勉強不足。でも、今回の企画展で一辺に惹かれてしまいました。
企画展のタイトルが「不思議な力」とあるんで、どういうことかと思っていたんですが、まさかの科学実験的な写真が最初に並んでいて、“おお、確かに不思議だ”と納得。しかも光がきれい。サイエンス・マジックとしては単純なんだけど、こんな風に“作品”として魅せてくれるものになるんだと感心。

「父のアルバム」は、また違った意味の「不思議な力」を感じさせてくれた。誰もが撮ったことがありそうな作品なんだけど、それ故に自分自身の記憶がリンクして、不思議な気持ちにさせてくれました。
どこで撮ったのか、たぶん道端に生えていたのか、薔薇の写真もきれい。ちょっと見上げたようなアングルで撮られた薔薇は、光を浴びて輝いていた。私も散歩の途中できれいに咲いている花を見かけると写真を撮ってしまうが、作家の父親はどういう気持ちでこれを撮ったのだろうか。勝手に親近感が沸いてきた。

秘境の風景や、異国の人びとを撮った写真は、それはそれで観たことない不思議さを感じる。だが、この作家の作品はどれもとても身近な、テーブルの上で見られるものや、日常の風景、そして近所の写真。それでいてタイトルの通りに“不思議な力”を持っている。見ている風景をどう切り取るかでこんな風になるのかと、写真の持つ面白さを教えてくれるものばかりでした。いや、面白かった。

写真展情報

  • 会期:2022/10/7 (Fri) – 2023/1/22 (Sun)
  • 開館時間 : 10:00 – 18:00(木曜日、金曜日は20:00まで))
  • 休館日: 月曜日、年末年始(12/29-1/1, 1/4) (12/28, 1/2, 1/3は開館)
  • 料金 : 一般 700円 学生 560円 中高生・65歳以上 350円 小学生以下および都内在住・在学の中学生は無料
  • 公式サイト :東京都写真美術館 
  • 図録 : 3,630円(税別)
  • 参考書

コメント

  1. 中野 潤子 より:

    国宝展のチケット取れなかたので窯変天目でも見に行こうかと思っていますが、恵比寿もいいですね。新しか方の写真ほとんど見たことありません。

    • bunjin より:

      国宝展、凄い人気ですね。私もチケットが取れそうになく。。。
      東京都写真美術館では三つの企画展を同時開催しているので、色々と楽しめると思いますよ。

  2. 中野 潤子 より:

    曜変でしたね。こちらはチケット取れたそうです。丸の内ですからそれから恵比寿ですね。

    • bunjin より:

      曜変天目茶碗は静嘉堂文庫美術館ですね。丸の内に移ってからまだ行ったことがありません。私も行ってみようかな。

  3. 中野 潤子 より:

    曜変でしたね。こちらはチケット取れたそうです。丸の内ですからそれから恵比寿ですね。