「吹きガラス 妙なるかたち、技の妙」展 こうやって作っているとは知らなかった

スポンサーリンク
「吹きガラス 妙なるかたち、技の妙」展 美術展・写真展
記事内にアフィリエイト広告が含まれています。

東京ミッドタウンにあるサントリー美術館で「吹きガラス 妙なるかたち、技の妙」展を観てきました。
この企画展では一部作品が写真撮影OKです。ただし、会場に掲載されている注意事項に従ってください。

展示内容

公式サイトの説明によると

紀元前1世紀に遡る吹きガラスの登場によって、ガラス容器の生産・流通が大きく変化しただけでなく、ガラスならではの〈かたち〉が開花しました。本展覧会では、そのような吹きガラスならではの表現を生み出した作り手の〈技〉に注目しながら、古今東西の特色ある吹きガラス作品をご覧いただきます。あわせて、現代のガラス作家や研究者とコラボレーションした研究成果をご紹介し、かつての名もなき吹きガラス職人たちの創意工夫に迫ります。

吹きガラス 妙なるかたち、技の妙 サントリー美術館

とのこと。

展示構成は以下の通り。

  • 第Ⅰ章:自然な曲線美 ――古代ローマの吹きガラス
  • 第Ⅱ章:ホットワークの魔法 ――ヨーロッパの吹きガラス
  • 第Ⅲ章:制約がもたらす情趣 ――東アジアの吹きガラス
  • 第Ⅳ章:今に連なる手仕事 ――近代日本の吹きガラス
  • 第Ⅴ章:広がる可能性 ――現代アートとしての吹きガラス

二千年前のローマ帝国では、すでに吹きガラスの技術が確立していて、色々なものが作られていた。ただ、最初のうちは「型」にガラスを吹き込むようにして作られていたので、形はシンプルなものが多かった。段々に、文字通り、吹いて膨らます技法が生まれてきて、さらには暑いうちにガラスを摘まんで引っ張るための道具なども登場する。これらによって表現力が増していった。「二連瓶」や「四連瓶」がどのように作られたのかを解説しているので、チェックしてほしい。

ローマの技術は帝国の拡大とともに各地へ伝播していく。これらの作品は1~5世紀のシリアなどで作られたもの。複数の“部品”をくっつけて作られている。

「吹きガラス 妙なるかたち、技の妙」展

「ホットワーク」とは熔解炉で熔かした熱いガラスを成形・加工する技術のこと。吹きガラスというとこれを連想するだろう。この技術は十五・六世紀のイタリア、ヴェネチアで頂点に達した。それらの技法は書物にも残っていて、現代の我々の知るところとなる。
熱したガラスを室温で冷やすと、ガラスにとっては“急冷”となり、割れてしまうことが多い。そのため、溶解炉よりは温度の低い炉を用意し、形を作り終わった作品をその炉の中でゆっくり冷やすという技術(徐冷と呼ばれている)がこの時代には出来上がっていた。また、ガラスを摘まむ器具や、吹き棒を水平に転がす手すりなども上記の書物に図入りで説明されている。

「吹きガラス 妙なるかたち、技の妙」展

網目やレースのような文様が多用されるようになる。この時代、この文様はガラスを削って作ったものではなかった。熱して捻りながら伸ばした細いガラス棒を束ね、それをもう一度溶解して吹き広げて作っていたのだ。ものすごく手間のかかる技法だが、それ故に職人の技が(文字通り)光っている。

「吹きガラス 妙なるかたち、技の妙」展

材料のガラス棒をルーペで拡大して見たところ。
その他、これを応用したさらなる超絶技巧も紹介されているので、是非見てみて欲しい。

「吹きガラス 妙なるかたち、技の妙」展

東アジアでもガラス細工は行われていた。しかし、当初は徐冷(ゆっくり冷ます)技術が欠けていたり、加工道具も限られていた。そのため、欧州の作品に比べると“素朴”なものであった。
しかし、十八世紀になるとそれら技術も導入され、より複雑なデザインの作品も作られるようになっていった。

「吹きガラス 妙なるかたち、技の妙」展

明治時代になると官営のガラス工場も作られるようになる。これらは「氷コップ(かき氷入れ)」。製氷技術が広まって庶民もかき氷を食べられるようになると、それに合わせたデザインのガラス器が大流行したのだ。と言っても、これらは職人が全て手作業で作った吹きガラスだ。

「吹きガラス 妙なるかたち、技の妙」展

ガラスという素材は現代の工芸家も魅了する。ガラスを用いた現代工芸品も展示されている。真っ黒で、細長く伸びたガラス。植物なのか、微生物なのか、不思議な魅力を持った作品となっている。

「吹きガラス 妙なるかたち、技の妙」展

電気炉によって温度管理もし易くなり、より複雑な形状も作ることができる。いったん、直方体に成型した網目状のガラスを、再度熱して変形させたこれらの作品は、握りつぶせるような柔らかさを感じさせる、これまた不思議なもの。

「吹きガラス 妙なるかたち、技の妙」展

感想

あのガラス器ってこうやって作られていたとは知らなかった!と驚くことしきり。いやぁ、勉強になりました。映画「テルマエ・ロマエ」で、阿部寛演じるローマ人が、牛乳瓶の精巧さに驚き、自分たちのガラス器の稚拙さを嘆くというシーンがありました。でもでも、そんなに嘆くことはなさそう。古代ローマの職人たちの技術も本当に凄かったんだなと感心しました。手仕事であんな器を作っちゃうのだから。二連瓶・四連瓶なんて、不器用な私には絶対に無理ですよ。

ヴェネチアグラスのあの網目模様も、こんな風に作っていたとは。最初に考えついた人を尊敬せずには居られません。さらにさらに驚きですよ。途方もない手間がかかっただろうに。まあ、だからこそ王侯貴族に持てはやされたんでしょうけどね。

まあ、そんな技術の凄さももちろんですが、やっぱりガラス器って美しい。単純にその美しさに惹かれます。透明ではあるのに、色もついている。器本体の美しさに、それを光が通ってできた影の美しさも加わって、相乗効果を生み出している。明治時代に流行ったという「氷コップ」は、かき氷を入れていなくても、それ自体で涼しげだ。そんなにかき氷好きではないけど、この器に入っていたら美味しく食べられそう。

写真撮影はできないんですが、最後のコーナーでは、現在も吹きガラスの技法に拘って器を作っている製作所の作品が展示されていました。手作り品って、今では贅沢品になってしまっているけど、こんなコップでアイスコーヒーを飲んだら美味しいだろうなぁ、欲しいなぁと思ってしまいましたよ。

暑くなってきた今の時期にぴったりの美術展でした。面白かった。

美術展情報

コメント