「国宝 鳥獣戯画のすべて」展 誰もが知っているのに、謎だらけ

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国宝 鳥獣戯画のすべて 美術展・写真展
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東京国立博物館 – トーハクで「国宝 鳥獣戯画のすべて」展を観てきました。

展示内容

公式サイトの説明によると

本展では、擬人化した動物たちや人びとの営みを墨一色で躍動的に描いた甲・乙・丙・丁全4巻の全場面を、会期を通じて一挙公開! また、かつて4巻から分かれた断簡、さらに原本ではすでに失われた場面を留める模本の数々も集結します。あわせて本展では、秘仏として普段は拝観のかなわない重要文化財「明恵上人(みょうえしょうにん)坐像」をはじめとした至宝によって明恵上人の魅力に迫るとともに、高山寺(こうさんじ)選りすぐりの名宝をご紹介します。

東京国立博物館 – 展示 日本の考古・特別展(平成館) 特別展「国宝 鳥獣戯画のすべて」

とのこと。

展示構成は以下の通り。

  • 第一章 国宝 鳥獣戯画のすべて
  • 第二章 鳥獣戯画の断簡と模本 ― 失われた場面の復原 ―
  • 第三章 明恵上人と高山寺

鳥獣戯画は、カエルや兎、猿が相撲を取ったり戯れていたりする画が描かれている巻物として知られている。教科書などでもその場面が取り上げられていることが多いだろう。だが、実はそれだけが鳥獣戯画ではない。その有名な場面も含め、全部で四巻構成となっている。これらは甲巻・乙巻・丙巻・丁巻と呼ばれていて、それぞれに描かれているテーマも異なり、また製作時期も異なっている。
今回の企画展ではこれら甲乙丙丁の全巻がすべて展示されている。

人気の甲巻は、混雑緩和のために「動く歩道」に乗って、人が流れていく形での鑑賞となる。そのスピードはかなりゆっくりなので、一番前でじっくりと観ることができ、この方法も悪くはないと思えた。また、二度並んでも怒られないようなので、時間があればどうぞ。
本物の展示コーナーの前には、“見どころ”をクローズアップしたパネルが何枚も展示されていて、直前の予習もできるようになっている。とはいえ、事前に勉強していった方がじっくりと楽しめるだろう。

乙丙丁巻は通常の展示。混雑していると「立ち止まらないで」と注意を受けてしまうが、まあそれでもじっくりと観られるでしょう。また、最前列でなければ立ち止まっていても文句は言われません。その時のために、単眼鏡持参がおすすめです。

断簡・模本のコーナーでは、過去に鳥獣戯画の本巻から切り離されてしまった部分が、掛け軸に仕立て直されているものなどが観られる。どこの部分であったかの説明もわかり易くなされているので、「ああ、なるほどねぇ」となるだろう。
また、模本ではオリジナルがこうであったろうという順序・配置で作品を観られるので、鳥獣戯画が持つ本来のストーリーを掴めるかもしれない。

ゆかりの高山寺と明恵上人のコーナーでは、明恵上人にまつわる数々の“伝説”が描かれた絵巻物や、明恵上人像、そして彼が愛玩したと言われる石や子犬の像も展示されている。鳥獣戯画に直接つながるか否かは未だ不明だが、独自の教義を展開していたとも言われる明恵上人の足跡を追っていくと、鳥獣戯画の不思議な世界観を覗き見た感じになるだろう。

感想

観てきました。“本物”を全巻(甲乙丙丁)揃いで観られる機会はそうそうないのではないでしょうか。少なくとも、私は初めての体験。事前予約制ですが、かなり混雑していました。やっぱり人気ですね。誰もが歴史の教科書で一度は目にしたであろう作品ですし、あのユーモラスなシーンは記憶に残りますから。
そして今回の企画展では、断簡となってしまった部分や、模写(後世の画家がコピーしたもの)も合わせて展示されていて、鳥獣戯画の全体像を知ることができるという、まさに“いたれりつくせり”のサービス。しかも、鳥獣戯画が保管されている高山寺ゆかりの明恵上人に関しても多くの関連作品が観られる“豪華特典”付き。
こりゃ、人気が出るのも頷けます。

それにしても不思議な作品ですね。「漫画の元祖」などとも言われていますが、確かに描写はとてもダイナミックで、複雑。カエルや兎が相撲をとっているシーンでは、二人(二匹?)が組み合っている形が描かれていますが、描くのが難しそう。また、経を読むカエルや僧侶の口からは線が飛び出るように描かれていて、まさに漫画のような表現になっています。疾走する馬にも、風を切っている表現なのか、似たように何本もの線がササッと引かれていて、「ピュー」って感じの効果音が聞こえてきそうです。これが七、ハ百年前の作品なのですから驚きですよ。

あと、私が小学校の歴史で習った時には「鳥獣戯画の作者は鳥羽僧正」となっていたのですが、現在は否定されていて、各巻バラバラの年代・作者によるもの(一部同じと考えられているところもあり)というのが定説で、結局は誰が描いたのか未だに謎だそうです。
江戸時代に描かれた模本には「鳥羽僧正による・・・」のような記述があり、作者鳥羽僧正説はこの時代には確立していた、なんてことも知ることができました。こういう“歴史ミステリー”にも事欠かないのが鳥獣戯画の魅力の一つなのでしょう。

いやぁ、面白かった。「混雑緩和のために90分で」との案内があったのですが、列に並んで待つ時間もかなりあり、二時間ほどかかってしまいました。でも、それだけの面白さはありましたよ。

美術展情報

ぶんじん
ぶんじん

残念ながら緊急事態宣言のため、休館となってしまいました。再開は2021-04-24時点で未定とのこと。うーむ。。。
とりあえず、図録や参考書をゲットして予習しながら待つのがよろしいかと。

コメント