東京ミッドタウンにあるサントリー美術館で「まだまだざわつく日本美術」展を観てきました。
この企画展では写真撮影OKです。ただし、会場に掲載されている注意事項に従ってください。
展示内容
公式サイトの説明によると
ある作品を見た時、「えっ?」「おっ!」「うわぁ…」と感じたことはないでしょうか?こうした言葉にならない「心のざわめき」は、作品をよく見るための大切なきっかけとなるはずです。
(中略)
作品との出会いによって沸き起こる、自分自身の「心のざわめき」に耳を傾けると、日本美術の魅力にぐっと近づけるような、意外な発見があるかもしれません。
とのこと。2021年に開催された「ざわつく日本美術」の第二弾となっいます。
展示構成は以下の通り。普通の美術展では見かけない表現が並んでいます。
- 第1章 ぎゅうぎゅうする あれもこれも!?「 ○○尽くし」デザインをひとつ残らず知り尽くす
- 第2章 おりおりする 実は自由自在!? 屛風を自分好みに折り曲げてみると…
- 第3章 らぶらぶする いつの時代も心ざわめく!? 思い思われふりふられな複雑♡模様
- 第4章 ぱたぱたする 二次元⇔三次元!? 展開させればハッとする立体作品の妙
- 第5章 ちくちくする 手は口ほどにものを言う!? ひと針ひと針に表れた刺し手の気持ち
- 第6章 しゅうしゅうする 集めて分けて保管して!? コレクターたちの愛と執念
「○○尽くし」は特に縁起物を並べたものが多い。鹿の角やら珊瑚やら打ち出の小槌やらなんやらと、宝物を所狭しと並べて描いた皿は見ているだけでおめでたい気分になる。
他には、青磁や白磁など、色々な壺のカタログのような図柄の青磁皿なんてものも。全種類を並べたくなるその気持ちは理解できます。

貝合わせは、小さな貝殻の内側に絵を描いてこれまたギュギュッと詰め込んだ感じがいい。

屏風って、きれいに広げて勢体を眺めるものだという固定観念があるが、屏風の元々の用途は空間を仕切るということ。そのため、単に広げるだけではなく、その場を囲うようにコの字型にしてみたり、右隻左隻を“普通とは異なった形で”繋げてみたりすると、ずいぶんとその表情が変わってくる。逆V字型にした虎の図は迫力あるものになった。
そんな屏風をどこで折り曲げるか、どうくっつけてみるかを自分で確かめるコーナーができていた。ミニチュア屏風とアクリルスタンドを使って、好きなように試せるのだ。虎の図でぐるりと人を囲むように配置すると、虎退治に向かう勇者のように見えてくる?!

「らぶらぶする」コーナーでは恋愛を題材にした絵巻物などが紹介されていた。鼠の男(雄?)が人間の姫に恋をする話や、鳥羽院の寵愛を受けた美女が実は双尾の狐が化けていたという「玉藻前草子絵巻」などなど、色々な愛の物語だ。

このコーナーでは各作品を説明しているキャプションもハート型となっていた。

「ぱたぱたする」コーナーでは、箱の側面をぐるっと一周するように図柄が描かれているような作品が紹介されていた。まあ、これまでもよく見てきたものではあるけど、改めて言われると確かにぐるりと一周して眺めたことは少なかったかも。

「しゅうしゅうする」コーナーは色々な時代のコレクターたちの蒐集品を紹介している。
こちらは某皮膚科医が集めた「櫛」のコレクション。この人は櫛だけではなく、髪型を描いた“ヘアデザイン本”なども収集していた。

ガラス片を収集していた人もいたようです。ちゃんとした器も持っていたとは思いますが、収集癖が嵩じるとこのような破片までもコレクションしちゃうようになるんですね。

サントリー美術館自体も作品収集をコツコツと進めていった歴史があるとのこと。個人のコレクションをベースにして創られた他の私立美術館とは異なり、初代館長でサントリー二代目社長の佐治敬三氏は特に美術品のコレクションを持っていた訳ではなく、美術館をやるぞとなってから収集していったのだそう。で、その記念すべき最初の蒐集品がこの鎧兜(朱漆塗矢筈札紺糸素懸威具足)だそうです。かの豊臣秀次(秀吉の弟)の持ち物と伝わる逸品。今や収蔵品だけで多くの企画展を催せるほどのサントリー美術館ですが、そんな歴史があったとは知りませんでした。

感想
「美術鑑賞は好きに作品を見て楽しめばいい」とは良く聞くフレーズですが、とは言え背景となる歴史や古典文学作品などの“教養”があると理解が深まるのは確か。
でも、今回の企画展はそんな面倒くさいことなしに、その場で見れば面白さが分かる仕掛けとなっていました。

屏風は六曲一双が基本で、右隻左隻が対になっていて、右から左へと時間変化が描かれる。。。などなど、知識が貯まっていくと逆にものの見方が固定化していくのかもしれない。屏風は寝床を囲って“個室”を作るために使われるのだから、下から見上げた時にどう見えるかを意識して作られたものもある、なんてのはまさに目から鱗。うむ、ざわざわしてきそうです。
作品を素直に楽しむということを再認識させてくれた企画展でした。面白かった!
美術展情報
- 会期 : 2025/7/2(Wed) – 8/24(Sun)
- 開館時間 : 10:00 – 18:00 (金曜日、8/9,8/10,8/23は20:00まで)
- 休館日 : 火曜日
- 料金 : 一般 1,700円 、 大学生 1,200円、高校生 1,000円、 中学生以下 無料
- 公式サイト : まだまだざわつく日本美術 サントリー美術館
- 図録 : 2,600 円(税込)
- 参考書
コメント