菊池寛実記念 智美術館で「篠田桃紅 夢の浮橋」展をSNS鑑賞イベントに参加して観てきました。
展示内容
公式サイトの説明によると
篠田桃紅(しのだとうこう/1913-2021)は、書と水墨という日本文化に深く根付いた領域で、「書く」ことを制作の根本としながら、墨による抽象表現を開拓した芸術家です。
最新の展覧会|展覧会|菊池寛実記念 智美術館
(中略)
当館は、創設者の菊池智(1923-2016)と作家との交流が機縁となり、篠田作品を建物内に設置する所縁ある美術館としてこれまでも個展を開催してまいりました。本展では、昨年107 歳で逝去した作家を追悼すると共に、改めてその創作をご紹介します。
とのこと。
建物に入ると正面に早速、篠田桃紅の作品が飾られています。この美術館のシンボル的作品で、来訪者をお出迎えしているよう。
篠田桃紅は、漢字を文字として書いている以上は東洋人にしか理解できないことに疑問を持ち、“表現の自由”を採ることにしたそう。そして、墨で書いた(描いた)抽象画なので、「墨象」と称されるようになったのでした。
ただ、この壁画では文字として認識できそう。真ん中に書かれているのは「女」だそうです。菊池智が、自分の代わりに「女」がお出迎えしている感じを出すためにここに展示されています。
智美術館の展示室は地下にあります。この螺旋階段を下っていくのですが、その壁にも篠田桃紅の作品が。元々が屏風絵だったものを裁断して再構成したものだそうです。
この壁画のキャプションは一階手すりの脇にコソッとあるのでお見逃しなく。
墨象画は、全てが読めない文字ではないようです。「雪月花」は“東洋人”なら判別できそう。
「山上焚火」もなんとか読めますかね。
現代人には草書で書かれた文字を読むのはかなり困難。文字であろう事は分かっても判別不能。三好達治の詩を書いたそうですが、そろそろ文字と絵画との境界線にさしかかってきた作品と言うことでしょうか。
篠田桃紅の作品それぞれにはタイトルが付けられている訳ですが、これがまた難しい。この左側の作品は「Commemoration I , II」とのこと。「祝賀」とか「記念」と言った意味の単語ですが、何を祝っているのでしょうか。
日に照らされて輝くススキの穂のように見えます。
こちらは金色の「山」かな。
パターンの異なった四種のテキスタイルが並んだような作品。「A Legend」(神話)と題されていましたが、どんな物語なのでしょうか。
でも、なぜか私はこの作品に惹かれてしまった。壁紙のような模様に何か意味がありそうで、いや、意味をくみ取れそうで。古の物語は土に根ざしていたり、輝いていたりするのでしょうか。
“平面作品”だけではなく、着物も展示されていました。篠田桃紅さんは着物や帯のデザインもしていたんですね。
感想
篠田桃紅は107歳で亡くなる直前まで作品制作をしていたそう。戦前から既に活動を開始していたのだから、八十年以上もクリエイティビティを保っていたことになります。もう、それだけで凄い。しかも「墨象」というオリジナルな世界を創り上げてしまったのだから恐れ入ります。
智美術館にはこれまで何度もお邪魔しているので、私も篠田桃紅の作品を何度か目にしています。初めに思ったのは、金文や甲骨文字のような象形文字への原点回帰を目指したのかな、と。文字が絵と同じだった頃の自然観を表現したかったのではないかと思ったんです。でも、そんなに単純なものではなかった。篠田桃紅が書く(描く)文字は段々と文字として認識できなくなり、当然のことのように可読性もなくなり、力強い線だったり、モンドリアンの描く「コンポジション」のような平面構成になっていく。それでいて、単なる線や平面ではなく、文字だったものをなんとなく彷彿させるような曲線を描いていたり、重なり合ったりしている。
「墨象」画はどういう想いで創られていったんでしょうね。私には想像も及びません。
そんな不思議な世界観。一見の価値ありですよ。
美術展情報
- 会期 : 2022/6/18(Sat) – 8/28(Sun)
- 開館時間 : 11:00 – 18:00
- 休館日 : 月曜日, 7/19 (7/18は開館)
- 料金 : 一般 1,100円 、 大学生 800円、 小中高生 500円
- 公式サイト : 最新の展覧会|展覧会|菊池寛実記念 智美術館
- 参考書
コメント
篠田桃紅さんの本は我が家にもあるようです。相棒の書架ですが。
随筆もエッセイスト・クラブ賞を受賞されているほど。多才な方だったんですね。