東洋経済新報社主催の試写会で観ました。
★ あらすじ
幕末の京都洛南のある村。ここには、どんな病気にも葛根湯を処方しておしまいにする漢方医の弦斎と、元は漢方医ながら長崎で学んできた蘭方医の太吉の、二人の医者がいた。互いにライバル視しながらも上手くやっていた。
そんな折、街の呉服屋の放蕩息子の新左がバクチ絡みのトラブルで重症を負う。呉服屋の娘で新左の妹の峰を診療し、快癒させていた太吉は、今度は新左を助けることになる。ただ、さすがの太吉もやったことのない手術をしなければならなかったのだが、妻のフミのいつもの台詞「万事うまく行く」の精神で何とか乗り切った。
新左は命の恩人である太吉に、そして蘭方の医学に感心し、太吉に弟子入りを申し込む。そして、下働きなどをした後に長崎へと“留学”するために旅立っていった。
その後も太吉は日々、弦斎と口げんかしながらも村の人々のために地道に診療を続けていった。だが、そんな村にも危機が次々と襲いかかる。腸チフスの蔓延や、新政府軍と旧幕府軍との戦闘などなど。村にあふれかえる病人、けが人。太吉はそれでも危機に立ち向かっていくが、やがて時代の変化、そして自身の限界を知ることとなる。
★ キャスト&スタッフ
- 出演:佐々木蔵之介、藤原季節、内藤剛志、藤野涼子、室井滋、真木よう子、柄本明、他
- 監督:緒方明
- 脚本:西岡琢也
- 原案:映画「ふんどし医者」
- 製作:大森一樹、浮村理
- 音楽:coba
★ 感想
故大森一樹監督の「ヒポクラテスたち」を観たのは学生の時だったろうか。今は無き京都の京一会館だったと思う。スーパーマーケットの二階にあった、いわゆる名画座。京都が舞台の作品特集の時だった。大森一樹監督が京都府立医科大学の卒業生で、自身の体験を交えて医学生たちの臨床実習を通して将来の不安やら友情やら、医療現場の実情やらを描いた作品。今も好きな映画です。
その京都府立医科大学の創立150周年記念映画であり、大森一樹監督が企画に最後に携わった映画がこの作品。
話はシンプルで、日本の医療の中心が漢方から蘭方へシフトしていく時期のゴタゴタをコメディ調に描いている。舞台が江戸や長崎などの“中心地”ではなく、京都の外れの村だというのが面白い。庶民の目線で話が進み、人情やら迷信やらと思想信条や正義感などが入り混じり、それが面白おかしくもあり、リアリティもある。村人達は漢方医を藪医者だと言いながらも完全には否定しないでいる。蘭方医を夷狄と罵り威張り散らしていた新撰組の隊員は、倒幕軍に敗れると蘭方医に助けを求めてくる。昔から信じていたものをすぐには捨てられない気持ちと、時代・状況が変われば命を長らえるために実利を取る身の変わりの速さが同居しているのが人間だということなのだろう。滑稽なようでいて、本質的な話だ。
「ヒポクラテスたち」とは雰囲気がだいぶ違うが、娯楽作品としてとても楽しめた。何よりも、素直にクスクス笑えるシーンが一杯。試写会の会場でもあちこちで笑いが起きていた。スーパーマンも悪人も出てこない、誰もが等身大の人。だからこそ共感できるし、滑稽でもあるのだろう。深読みせず、素直に観て楽しめばいい作品だ。
話の最後に、取って付けたように京都府立医科大学の“紹介”シーンがあるのだが、あまりにもあからさまなので、もうちょっと何とかしても良かったんじゃない?と思ってしまった。でも、それがコメディであるこの映画の最後のシーンとして“苦笑い”できるものだったから、これはこれで正解なのかも。
★ 公開情報
- 公開日:2026/5/8(Fri)
- 主な上映館:丸の内ピカデリー、恵比寿ガーデンシネマ、他全国
- 公式サイト:映画『幕末ヒポクラテスたち』公式サイト


コメント