「ブックセラーズ」 紙の書籍の未来はどうなっていくのか

ブックセラーズ 映画・演劇

★ あらすじ

“個人の書籍店主・店員”がブックセラーだ。自分で本を選び、店に並べる。もちろん、彼らの店でも新刊本も扱うが、基本は本のセレクトショップであり、新刊書のみを扱うチェーン店のような書店とは一線を画している。
さらには、書籍だけではなく、作家の手稿(手書きの原稿)やノート、手紙、写真などを扱う店・ブックセラーもあり、“本”にまつわるあらゆるものが対象だ。

そんな彼らの商売相手・顧客は、研究目的の人もいるが、多くは主にコレクターと言われる“普通”の人びとだ。絵画コレクターには投資目当ての人も少なくないが、書籍のコレクターはそれぞれその人だけが持つ想いだったり何かへの拘りだったりによって本を集める事がほとんどだ。
女性の解放運動家は、女性によって女性が描かれた本を集めている。いや、最初にそんな本に出会ってから活動を始めた。
アメリカ合衆国初期の頃に出版された書籍を収集している人もいる。自分の国の始まりを求めるその気持ちからだ。
ヒップホップの原点・源流を求めて、当時はほとんど流通することのなかった専門雑誌を集めている人もいる。

もちろん、映画「ナインスゲート」に出てくるような“稀覯本”、“希少本”を追い求める人もいる。レオナルド・ダ・ビンチの手稿は史上最高額でかのビル・ゲイツが落札したし、「不思議の国のアリス」のオリジナル手稿や、ホルヘ・ルイス・ボルヘスの手稿、そして「若草物語」の著者オルコットが偽名で書いたパルプ小説(低質な紙に印刷された大衆向けの書籍・小説)、さらには宝石が散りばめられた装丁が為された本など、対象は様々だ。
そんな本を探すコレクターはハンターのようなもの。各地の書店を歩き回り、ブックフェアを巡り、目当ての本を何年も、何十年もかけて追い求めることもある。

だが、インターネット、そしてネットショップの出現によって状況は大きく変わる。何十年も探し求めていた本が、ほんの数分の検索をするだけで見つかってしまうようになった。希少本の価格も下落している。そんな状況にブックセラーたちは「この商売はもうおしまいだ」と嘆く。
だが、一方で新たな価値が生まれてもいる。カウンターカルチャー、サブカルチャーなどの書籍や関連品をコレクションしたいというコレクターが現れてくる。そんなニーズに対応すべく、新たな領域にブックセラーたちも踏み出していく。若い世代のブックセラーたちは「未来は明るい」とまで言っている。

だが、どのブックセラーたちも「紙の書籍がなくなることはない」と言う。「だって、七年前のパソコンのファイルを読み出すことはもうできないけど、五百年前の紙の書籍は今でも読めるんだから」と。

★ キャスト&スタッフ

  • 出演:ブックセラーズ(Dave Bergman, Lowry sisters, Jim Cummins, Arthur Fournier, and others)、Fran Lebowitz, Gay Talese, Susan Orlean, and others
  • 監督:D. W. Young
  • 制作:Parker Posey
  • 音楽:Dvid Ullmann

★ 感想

十年ほど前に、「Book : A Futurist’s Manifesto」(邦訳:「マニフェスト 本の未来」)という本をKindleで読んだことがある。電子書籍が一般的になり始めた頃に、これからの出版界・本はどうなるのかを論じた一冊だ。その予想通りにはなってはいないものの、出版業界が大きく様変わりしたのは確かだ。雑誌の休刊・廃刊が相次いでいるし、セールス規模は縮小している。だが、一方で人気漫画は品切れになるほどに売れているし、芥川賞・直木賞、そして本屋大賞などの受賞作・ノミネート作も人気だ。
街の書店はドンドンと姿を消している。しかし、ブックカフェと呼ばれる店はそれなりの出店数だし、立ち寄ってみると意外と(?)混んでいる。

この映画の舞台は主にニューヨーク。書店に対する考え方、書店の持つ役割も日本とは異なっているのかも知れないが、それでもとても興味深いドキュメンタリーだった。日本の場合だと“古本屋”に当たる商売なのだろうか。
ブックセラーズは、悪く言えば、その本の価値を余り知らない人から安く買い取り、コレクターたちに高く売ることで利ざやを稼ぐ商売だ。だが、だからと言って人気のゲーム機やコンサートチケットを買い漁って高く転売する、いわゆる“転売ヤー”とは違っているように思える。もちろん、商売でやっている訳だが、ブックセターたちは何よりも本に対しての知識が凄い。そして、きっと本が好きだ。自分が本が好きだからこの商売をしている人も少なくなさそうだ。利益追求だけが目的で、売り物自体に何の拘りもない荒稼ぎだけが目的の転売ヤーとは違うのだ。

それは「本」というものが持つ不思議な魅力によるのではないかとも思わせてくれた。作品の内容は元より、誰が書いているのかも大きなポイントだ。そして、“物”としても装丁やカバーの美しさなどの魅力を持っている。読んだり、ストックしたりするにはもちろん電子書籍の方が便利なのだが、紙の本にはそれだけではない価値が確かにある。そしてそれを求めてやまないブックセラー、そしてコレクターがいるということにも納得。
百年後にKindleで購入した本を私の子孫が読めるかどうかはかなり怪しい。だが、紙の蔵書であったならばきっと読めるだろう。なるほど、本という媒体にはそんな時間軸も加味した四次元の魅力があると言うことなのでしょう。

★ 公開情報

★ 原作本、他

ドキュメンタリー作品なので、原作の類はありません。代わりに、作品内に出てきた書籍などを紹介します。
こちらは「若草物語」のオルコットがA. M. Barnardの名前で出した小説です。

「不思議の国のアリス」の手稿本はさすがに簡単に手に入らないでしょうけど、オリジナルのストーリーを載せた革装丁の愛蔵本が出ていました。

そして、私が読んだ一冊。

コメント