恵比寿ガーデンプレイスにある東京都写真美術館で「Don’t think. Feel.」展を観てきました。
展示内容
公式サイトによると、
文化、芸術に特有の共感覚や、感性的なコミュニケーション、想像力の可能性を考えます。「感じること」の重要性を説いた香港の武術家・俳優・哲学者ブルース・リー (1940-73)の言葉「Don’t think. Feel.(考えるな、感じろ。)」を手掛かりとして、当館の写真作品から五感を触発する作品を選んだ表題のセクションを中心に、短編小説集のように5つの小テーマで構成するオムニバス形式の展覧会です。
とのこと。
展示構成は以下の通り。
- 第1室「Don’t think. Feel.」
- 第2室「家族写真の歴史民俗学」
- 第3室「川内倫子〈Illuminance〉」
- 第4室「記憶の部屋」
- 第5室「イメージの奥にひそむもの」
言わずと知れたブルース・リーの名ゼリフから取られたタイトル。理屈ではなく、見て・触れて感じたものを写真で伝えようとする作品が選ばれている。
静物画のようにオブジェを配置して撮られた作品はそれらの物が持つ質感を感じさせてくれる。一方で、なぜこれらなのか、どうしてこのように置かれているのかはいかようにも解釈でき、答えはない。考えても無駄なのかもしれない。

草が生い茂り、荒れ果てた中に残るブランコなどの遊具は、ここがかつては公園だったことを物語っている。今は誰にも顧みられること無く、ただ懐かしさと空虚さと、若干の恐怖を感じさせるモノになっている。

文化史研究者 川村邦光士の著書「家族写真の歴史民俗学」では、家族写真の構図の中に家父長制的な意味あいを見ることができると述べている。父親が真ん中に陣取り、左右に家族が並ぶといったような構図だ。ここでは天皇家や外国の王族・貴族の写真が並んでいて、そのようなイデオロギーを感じ取ることができる。

家父長的な家族写真と対照的なのが植田正治の作品群。旧来の家族写真に対する風刺・挑発とも取れる構図だ。

川内倫子の作品展示では映像作品を見ることができた。日常の風景だったり、アラスカの氷山・流量だったり、虫たちの“食事風景”だったりが二つのスクリーンに映し出されている。それらは同じ作品だが、流すタイミングがずれていて、決して同じ画面を同時に見ることができない。カマキリが餌を食む横で氷山が崩れていたりするのだ。この偶然の重なりから被写体そのものとはまた異なった何かが感じられる。
記憶に残る風景は見る者に色々なことを思い出させ、また想起させる。ランドマークとなっている建築物の空撮作品は鑑賞者のその時代の記憶とリンクしていく。

何気ない街角の風景が、記憶とはまた別の、何かの“物語”を想起させることもある。一人街を歩く男や、車のドアが開いているシーンはこれから何かの事件が始まるような感じがしてしまう。

人々が集まっているシーンは、そこで何かが行われていたことを示しているが、時の流れとともにその集会の意味を知る者は減り、人が大勢いるという事実だけが残っているよう。それでも、きっと何かあったはずだと感じずにはいられない。

森村泰昌の「なにものかへのレクイエム(独裁者はどこにいる1)」は、感じるもなにも、ヒトラーのパロディであることはすぐに分かる。だが、この作品と併せて上映されていた映像作品を見ると、そこにはただのジョークだけではない、作者の意図が感じられる。

感想
ある意味、かなり挑戦的なタイトルのこの企画展。なにが並んでいるのだろうかと思ったが、見て回っていてなるほどねぇと思わされ、まんまとキュレーターさんの狙いにハマってしまったのでした。
写真にしろ絵画にしろ、その作品を見たときにどう解釈するか、何を見て取るのかってこちらの知識や感性を問われているようで、それが苦手で美術館に余り行かないという人もいそう。でも、そんなに考え込まずに感じたままを楽しめばいいということですね。もちろん、楽しいだけではなく、悲しくなったり、辛くなったりという感情が起きることもあるけど、そんな心揺さぶられる体験が面白いのかもしれません。まさに、考えずに感じればいいのでしょう。
私が面白いと思ったのは家族写真の構図に表れるジェンダー意識の話。夫婦別姓問題やら天皇の後継問題などでジェンダーに対する考え方が議論になることが多い昨今、興味のある作品群でした。 街の写真館で見本用に家族写真が飾られていることがあるけど、みんなどんな風に撮っているのかこれからは注意してみてみようという気になりました。
展示のテーマからちょっとハズレちゃうけど、ちょっと面白いものも見ることができました。
これは上記でも紹介した土田ヒロミの「砂を数える」シリーズのコンタクトプリント。巨匠でも露出オーバーさせちゃうこともあるんですね。

前に見たことのあるものも多く展示される収蔵作品による企画展は、まさにキュレーターさんの企画力次第ってところがあって、その点では東京都写真美術館のこのシリーズにハズレはないように思えます。今回も楽しませてもらいました。
写真展情報
- 会期:2026/4/2 (Thu) – 6/21 (Sun)
- 開館時間 : 10:00 – 18:00(木曜日、金曜日は20:00まで)
- 休館日: 月曜日、5/7(Thu) (5/4は開館)
- 料金 : 一般700円 学生 560円 中高生・65歳以上 350円 中学生以下およびTOPMUSEUM PASSPORT提示者は無料
- 公式サイト : 展覧会:TOPコレクション Don’t think. Feel. | 東京都写真美術館
- 参考書


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