「テリーギリアムのドン・キホーテ」 全ては夢・幻か

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テリーギリアムのドン・キホーテ 映画・演劇
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★ あらすじ

ドン・キホーテの映画監督となったトビー。映画スタッフを引き連れてスペインでロケをスタートさせた。だが、肝心の風車が回らないだののトラブルに見舞われ、気分直しにバイクで近くの村まで一人、ドライブに出掛けてしまう。実はトビー、学生の時に卒業制作としてその村でドン・キホーテの映画を撮ったことがあったのだ。
金もない学生映画だったこともあり、プロの役者ではなく村の住民たちをスカウトしてそれぞれの役に起用していった。ドン・キホーテ役には靴職人の老人を、姫役には酒場の主人の娘を、と言う具合だ。素人の彼らを上手くその気にさせ、作品はそこそこの出来となった。そして今、彼らがどうしているかと急に懐かしくなった訳だ。だが、トビーが村に着いてみると驚くことに元靴職人の老人は未だに自分をドン・キホーテと信じていて、酒場の娘はスターになることを夢みて家を出てしまっていた。トビーの映画のために、その後の人生が狂ってしまった人々ばかりだったのだ。

怖くなったトビーは村から慌てて逃げ出すのだが、そこで事件を起こしてしまい、警察から追われる身となってしまった。そして、逃亡中に現れたのが”ドン・キホーテ”(元・靴職人)だ。なぜか従者のサンチョにさせられてしまったトビーは、ドン・キホーテと逃避行、いや冒険の旅に出ることとなる。そこに待ち受けていたのは、かつての酒場の娘を金で囲い込んでいた悪徳領主、、、ならぬ、トビーが今、撮影を始めた映画のスポンサーであるロシアの富豪(ウォッカ王)だったのだ。この富豪が自分で買い取った城の中で中世のカーニバルに模したパーティーを始めたものだから、時代がいつなのかサッパリ分からなくなる。パーティー参加者は中世の騎士・貴婦人に仮装して、みんなそれぞれの役になりきっていたのだから。

ドン・キホーテとサンチョ(トビー)は娘を富豪から取り戻せるのだろうか。かくして、何が夢か現実か分からないままストーリーは続いていった。

★ キャスト&スタッフ

  • 出演:Adam Driver, Jonathan Pryce, Stellan Skarsgard, Olga Kurylenko, 他
  • 監督:Terry Gilliam
  • 脚本:Terry Gilliam, Tony Grisoni
  • 製作:Gerardo Herrero, Mariela Besuievsky, Amy Gilliam
  • 撮影:Nicola Pecorini
  • 美術:Benjamin Fernandez
  • 音楽:Roque Banos

★ 感想

ロスト・イン・ラ・マンチャ」(2002)を観た人はよく知っているかと思うけど、この作品は何度も映画化を試みたが、その度に頓挫してしまっていた曰く付きの一作。最初に企画がスタートしたのが1989年だそうだから、それから三十年かかって日の目を見たことになる。なるほど、呪われた映画とは良く言ったものだ。

失敗したことがドキュメンタリー映画になっちゃうくらい凄い逸話を持っている作品ではあるけど、それはそれとして置いておいても、普通に楽しめる映画だった。原作というか、ベースになっている「ドン・キホーテ」自体が人生の悲喜劇を盛り込んだ作品だけに、笑いながらも身につまされるような気になるストーリーになっている。
と言いつつ、非常に複雑な作りになっているので、上記の「あらすじ」を書くにも戸惑ってしまった。主人公が今時点で撮影している「ドン・キホーテ」の物語と、学生の頃に撮った「ドン・キホーテ」。そして自分がドン・キホーテだと思い込んでいる老人と一緒にトビーが見た幻想。富豪が催す、中世さながらのパーティー。さらには、映画の撮影を巡ってドタバタしている製作者やスポンサー、スタッフたちは、「ロスト・イン・ラ・マンチャ」で描かれていたテリー・ギリアムの実体験ともオーバーラップしてくる。時間軸が行ったり来たりする上に、現実と夢と過去の記憶も飛び飛びに出てくる。この重層的なプロットは三十年前から出来上がっていたのだろうか。

夢を追い求めて、その夢に振り回されてしまう愚かさ、哀れさ。それはドン・キホーテそのもののテーマでもあり、三十年もかけてこの作品を作り上げたテリー・ギリアム監督自身のことでもあるかも知れない。でも、そんな単純な”自虐ネタ”と言う訳ではないだろうし、この作品はどのように観れば、解釈すれば良いのだろうか。夢を追いかける人生は滑稽で愚かだと笑えば良いのだろうか。それとも、ドン・キホーテのように、夢を失って正気に戻った時に死なねばならなかったように、生きることは夢を見続けることなのか。

とりあえず、「ロスト・イン・ラ・マンチャ」をもう一度観て、子供向けの抄訳しか読んだことのなかった「ドン・キホーテ」をちゃんと読んでから再度、頭を整理しようかな。

★ 公開情報

★ 原作本、他

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