瞳をとじて

スポンサーリンク
瞳をとじて 映画・演劇
記事内にアフィリエイト広告が含まれています。
以下の内容は、いわゆる「ネタバレ」を含んでいます。

★ あらすじ

富豪の老人は余命幾ばくもないことを自ら悟り、妻とともに自分の元から去ってしまった娘を探し出して欲しいとある男に依頼する。娘は元妻と共に上海へと行ってしまったとのこと。突拍子もない話だったが、男は依頼を引き受けるのだった。

(と、これは二十年以上前に撮影された映画の一場面。ここから場面は展開し、現在のシーンとなる。)

映画「別れのまなざし」を撮影中に、主人公を演じていたフリオが失踪してしまう。海岸の崖に靴が残されていたので飛び降り自殺と見做されたが遺体は見つかっていなかった。監督のミゲルはやむなく撮影を中断、この作品は未完となった。

それから二十年余りが過ぎ、とあるテレビ番組がこの“事件”を取り上げる。インタビューを受けたミゲルは自らも過去を振り返っていった。
フリオは彼の友人でもあった。一緒に水兵として船に乗っていたり、一人の女性を巡って恋の争いをしたり。そんな日々の想い出を掘りかえしていく。

テレビ番組が放映されたあと、ある視聴者から思いがけない情報が寄せられたのだ。フリオと思われる人物が生きているというのだ。ミゲルはすぐに情報提供者に会いに行くのだが。

★ キャスト&スタッフ

  • 出演:Manolo Solo, Jose Coronado, Ana Torrent, Petra martinez, Maria Leon, Mario Pardo, Helena Miquel, Antonio Dechent, Josep maria Pou, Soledat Villamil, Kao Chenmin
  • 監督:Victor Erice
  • 脚本:Victor Erice, Michel Gaztambide
  • 音楽:Federico Jusid
  • 衣装:Helena Sanchis

★ 感想

「ミツバチのささやき」を観たのは大学生の時だっただろうか。正直、ストーリーはうろ覚えだが、アナ・トレントの演技に驚き、その純真無垢な姿に感動したことだけは覚えている。その後に出演した「カラスの飼育」や「エル・ニド」も観てしまった。今回の作品のエンドロールにアナ・トレントの名前を見つけた時にはなんとも言えぬ懐かしさを感じてしまった。
ビクトル・エリセ監督を知ったのも「ミツバチのささやき」。象徴的・詩的な映像を撮る監督さんだなと、即、ファンになってしまった。二作目の長編「エル・スール」ももちろん観た。そして、「10ミニッツ・オールダー」は観たけど、「マルメロの陽光」は観損ねていた。その後、長編映画作成が途絶えていたので“懐かしい監督”の一人になっていた。そして今回の作品。長編映画はおよそ三十年ぶり。いや、何があったのかと聞きたくなってしまう。

その「瞳をとじて」だが、ストーリーもその「空白の期間」が一つのテーマになっているし、主人公は元映画監督だし、私小説のような雰囲気の作品だった。そして、劇中劇の「別れのまなざし」は父と娘の再会の物語で、失踪したフリオと娘のアナとの関係にだぶる。劇中劇、映画のストーリー、そしてビクトル・エリセ監督の三十年ぶりの長編にアナ・トレントが再び出演するという“現実”。その三層で物語が創られているように思えた。
そう考えると、なぜ今この作品を作ったのかが何となく分かった気になってしまった。ビクトル・エリセ監督の年齢は八十歳を超える。劇中劇の「父」は老齢で、映画のストーリーのミゲル監督にも歳をとったことを自覚しているような台詞がある。過去を振り返りつつ今を生きていくという、「悟りの境地」とはちょっと違うけど、なにか区切りを付けたい思いだったんじゃないかと。自分が作りたかった映画とはこういうものだ、と言いたかったんじゃないかと。

169分という、最近の映画としては長めだったが、ゆったりとしているようで一つずつのシーンの緩急があり、引き込まれてしまった。ゆっくりと、読書をしているような感覚で観られる映画、そんな作品だった。いや、やっぱり観て良かった。

★ 公開情報

瞳をとじて

★ 原作本、他

Amazon Prime Video : 「ミツバチのささやき」

「エル・スール」の原作を読んだ私の感想はこちら。

コメント