あらすじ
真知(奈緒)の母 美津子は元女優。小さな地方の真知から東京へと出て行った憧れの存在だった。だが、人気は徐々に落ちていき、夫とも別れて、高校生になった娘の真知と郷里に出戻って来ていた。町の人々は、憧れと嫉妬の対象だった美津子に対し、今度は見下すような態度を取るのだった。それは娘に対しても同じ。そんなこんなで、母子関係はギクシャクしてばかり。そして、真知は学校でも浮いた存在になっていたが、同級生の生島理々子(伊藤万理華)や、母美津子の高校時代の同級生だった担任の先生の小野千秋(田村たがめ)とは付き合いがある。
そんなある日、母の美津子が急に社交的になり、近所づきあいまで始める。真知には、外見は母なのだが、中身は別人が入れ替わっちゃったんじゃないかと思えるほどだった。そんな疑問を解決すべく、理々子と一緒に、街一番の変わり者である大橋由道(今野浩喜)に相談に行く。二人に対し、大橋は驚くべき事を言い出す。「パラレルワールドのもう一つの世界に住む“美津子”と入れ替わっちゃったんじゃないか」と。そう、その通りだったのだ。なぜか真知の家の納戸はもう一つに世界との通り道になっていて、その「ドア」の向こうは“あちら側の世界”に繋がっていたのだ。
二人は意を決し、「ドア」の向こうの世界へと入っていく。そこには、“こうだったら良かったのに”と彼女たちが考えていた通りの生活を送っている街の人々、そして自分たちが暮らしていたのだった。
母の美津子はやはり、入れ替わっていた。それは、“こちら側の世界”の美津子と、“あちら側の世界”の美津子と二人で話し合って行ったことだった。
“あちらの世界”では、自分たちが犯していた過去の過ちや、本当はこうしたいという想いだったんだということに気付き、思案に暮れる。だが、自分たちのこれまでと、これからの世界を考え、真知はやはり“こちら側の世界”の母を取り戻したいと思ったのだった。
キャスト&スタッフ
感想
やり直したいと思える過去の過ち。いや、過ちと言わないまでも、「別の選択肢を選んでいたら」という想いは誰にでもあるだろう。そんなモヤモヤを「パラレルワールド」だったり、親の世代と子の世代だったりと、二重・二軸のストーリーを複雑に絡ませて描いている。
と言っても、そんなに複雑な話ではない。それぞれ対称となる役柄は分かり易く異なったアイデンティティを持っていて(自己中心的 v.s. 献身的など)、オセロの白黒のようだ。その白黒のコマが、「ドア」を通り抜けて別の世界で混じり合い、上手い具合に他の人を裏返していくような感じ。自分のいやな面がなくなり、こうありたいと思った性格の、もう一人の自分に出会った時、こんな風に思うのだろうかと、想像しながらストーリーを追っていった感じだった。
出演者全員が一人二役、いや、同じ人物なんだけど全く違ったパーソナリティを演じている。役者さん達も大変そうだ。いや、不思議なチャレンジを楽しんでいるのだろうか。見ている側は、入り組んだ話なのに、すんなりとストーリーが理解できた。人は誰でも二面性を持っている、ということをこういう形で表現したと言うことなのかな。
「自分自身を見つめ直せ」だの、「自分の性格を知ることが大事」などとは良く言われる話だけれど、実際にはなかなか難しいもの。こんな風に“別の自分”と対峙しない限り、客観的に自分を分析するなんてできませんよ。「パラレルワールドには別の自分がいて…」と想像すると、それが少しはできるようになるのかな。そんな想像をしてみるのも楽しそう。
伊藤万理華さん出演と言うことで観に行きました。ちょっと意地悪な“悪ガキ”のような役と、素直で良い子の役の両方を一度に観られて、ファンとしては得した気分。童顔を活かしての高校生役はピッタリでした。
COVID-19のパンデミックに対する緊急事態宣言のため、上演がどうなるのか心配でしたが、無事に幕が上がったようでなにより。私は近所(三軒茶屋)の世田谷パブリックシアターで観劇しましたが、このあとは全国各地で上演するそう。機会があればどうぞ。おすすめです。
公演情報
- 期間・会場 :
- 2021/05/16 (Sun) – 05/30 (Sun) 東京:世田谷パブリックシアター
- 2021/06/03 (Thu) 群馬:太田市民会館
- 2021/06/06 (Sun) 新潟:りゅーとぴあ 新潟市民芸術文化会館
- 2021/06/09 (Wed) 富山:富山県民会館
- 2021/06/12 (Sat) – 06/13 (Sun) 大阪:サンケイホールブリーゼ
- 2021/06/16 (Wed) – 06/17 (Thu) 愛知: ビレッジホール|愛知県名古屋市のイベントホール[日本特殊陶業市民会館]
- 2021/06/19 (Sat) – 06/20 (Sun) 福岡:ももちパレス・ももち文化センター
- 公式サイト : M&Oplaysプロデュース「DOORS」特設サイト | 作・演出:倉持 裕 | 出演:奈緒、伊藤万理華、菅原永二、今野浩喜、田村たがめ、早霧せいな
- パンフレット 1,000円(税込)
コメント
孫と行ったアナ雪以来、映画館行っていないですね。
緊急事態宣言、演劇はOKで、映画館や美術館はダメって、どういう基準なのかサッパリわからんですね。
>別の選択肢を選んでいたら
>人は誰でも二面性を持っている
あるある、ですね!
下り坂の人生(笑)をマイペースで歩きながら、
時々 そのような事を考えることがあります。
自分の嫌な面が無くなるドアがあったら、
ホント、いいのになぁと思います。。。
“もう一つの世界”は覗いてみたいと思いつつも、ちょっと怖い気もします。実際にこんな「ドア」があったらくぐっていくのに躊躇しそうです。