「文書管理の歴史を紐解く」展 公文書改竄は鞭打ちの刑だった

文書管理の歴史を紐解く 美術展・写真展

国立公文書館で「文書管理の歴史を紐解く-古代~近世の文書の管理・保存・利用-」展を観てきました。

国立公文書館では写真撮影OKです。ただし、フラッシュ・三脚NGなどの注意事項がありますので、確認の上、撮影してください。

展示内容

公式サイトの説明によると

令和3年(2021)は、当館の開館50周年、公文書管理法施行10周年という節目の年となります。そこで本年第1回目の企画展では、古代から近世にかけて、朝廷や公家、幕府や武士たちが記録・保存・利用してきた、重要文化財を含む当館所蔵の貴重な古書・古文書を展示いたします。

展示会情報:国立公文書館

とのこと。

展示構成は以下の通り。

  1. 歴史書編纂事業と六国史
  2. 律令制下の文書管理
  3. 記録の役割と管理
  4. 江戸幕府と記録資料

文書管理以前の、「文書」で歴史を残すことの始まりが「古事記」「日本書紀」。

「古事記」は、稗田阿礼が全文を記憶していたものを、太安万侶が文書の形にして残した(どちらも天皇の命による)もの。

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720年に天皇に奏上されたと伝わる「日本書紀」だが、原本が残っている訳ではない。室町時代に公家の三条西実隆が書写したものを、さらに慶長年間(江戸初期)に転写したものが公文書館に保存されている。過去の書物を、写本という形で、まさに手作業で後世に残し、伝えてくれた先人たちのお蔭で、我々は今の時代にその内容を知ることができている訳だ。

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歴史の収集編纂は、中央政府関連だけではなく、地方の国々に関しても行われた。それが各地の風土記。現存しているのは常陸・出雲・播磨・豊後・肥前の五カ国のみ。

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七世紀半ばになると、唐に倣った法整備(律令)を進めていく。「律」は刑法にあたるもので、様々な罰則が規定されている。
例えば、詔書(天皇の命令を伝える公文書)に誤りがあった時、天皇に奏上することなく勝手に改訂して発行した場合は五十回の鞭打ちの刑(「笞(ち)」(木の枝で作った鞭)で尻を叩く刑)と書かれている。

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公文書の保管方法も決められていた。日付や作成した役所を記入することや、書庫には十五日ごとに収蔵する事などが書かれている。

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律令制がきっちりと運用されていた時代は、公務として国家公務員が記録を録っていた。しかし、律令制が崩れていき、公家たちが中心になって国を動かすようになると、公家の日記が重要な記録となっていく。有職故実(朝廷や公家、武家の行事や法令・制度・風俗・習慣・官職・儀式・装束などのこと)を記録し、伝えていくために書かれた日記は、現代のそれとは意味あいが全く異なっている。

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摂政・関白を歴任した藤原忠実(知足院殿)の日記も伝わっている。

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武士の時代になっても記録を残すことは当然、続けられている。鎌倉幕府が編纂した歴史書が「東鏡」だ。漢文で書かれた「吾妻鏡」を仮名交じり文に書き改められたものだ。

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室町時代になっても、多くの文書が発行されているが、まとまって記録に残されている(コピーをまとめて保管している)ということはなく、受け取った側が保管していたものが伝わっている形だ。
これは、足利義満による下文。朽木家の所領安堵を印したものだ。

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江戸時代になると、徳川家康を初め、将軍たちが古文書の収集保管を行うようになる。家康の命で設けられたのが「紅葉山文庫」。吉宗も、各大名たちに古文書があれば差し出せとの命を発している。

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公文書や古文書を記録保管する「文庫」を管理する役職(書物奉行など)も設けられ、彼らは多くの記録(政務日記など)を残している。

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このようにして、「公文書」は作成され、保管され、残されていき、今の我々が目にするところとなっているのだ。

感想

公文書危機」なんて本を読んだ。今どきの政治家や官僚はメール、そしてLineなどを使うことが多く、それらは「公文書」とは見做されずに管理・保存されることもなく消されてしまっているとのこと。いや、酷い話だ。国立公文書館友の会に入っていることもあって、「公文書館の人たちはこの現状をどう感じているんだろうか」と思ったのでした。
そんな危機感を背景にしているのか否かは分かりませんが、本企画はタイムリーでしょう。「赤木ファイル」がニュースを賑わしている今、公文書を残し・伝えることの重要性を訴えている企画なのですから。
養老律令によれば、公文書改ざんは鞭打ち五十回の刑ですからね。今回の改ざん事件の役人さん達は何回鞭で打たれなければならないのでしょうか。まあ、鞭打ちの刑はともかく、ちゃんと記録を残すルール(法律)や仕組みを作って運用してもらいたいものです。

古文書を収集し、写本を作って保管していた人たちのお蔭で我々は千年以上前の文書も読むことができる訳ですが、本企画展では主だった “ヒーロー” も紹介してくれています。写本を多く作成した三条西実隆や、群書類従でお馴染みの塙保己一、蔵書を元に学問所を開いた林羅山などだ。
コピー機もカメラもない時代。すべて手書きで書き写さねばならないのだから大変だ。さらに、塙保己一に至っては、目が不自由だったためにすべてを記憶していたというのだからさらに驚き。話はちょっと違うけど、Kindleでホイホイと本を買ってしまえる今の時代と比べて、書物の持つ意味・貴重さ・重要さは全く違っていたのでしょう。

今回も色々と勉強させてもらいました。

美術展情報

  • 会期 : 2021/6/26(Sat) – 8/29(Sun)
  • 開館時間 : 09:15 – 187:00
  • 休館日 : 無休
  • 料金 : 無料
  • 公式サイト : 展示会情報:国立公文書館
  • 図録 : 無料のパンフレットが配布されています

コメント

  1. 中野潤子 より:

    直に目にできるなんていいきまいですね。稗田阿礼、阿倍仲麻呂・・超懐かしい名前を目にしました。

    • bunjin より:

      直接、読めたらもっと楽しいのでしょうけど。漢文、崩し字の勉強をしないといけないかな、と思っているところです。でも、難しそう。。。

  2. 中野潤子 より:

    追伸 良い機会と書いたつもりでした。