「コンスタブル展」で、モクモクの雲の原点を知る。風景画も良いものですね

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美術展・写真展
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三菱一号館美術館で開催中の「テート美術館所蔵 コンスタブル展」内覧会に参加してきました。

例によって特別な許可をいただいて写真撮影しています。通常は撮影禁止ですので、ご注意願います。

後述の通り、一点のみ撮影可能となっています。

展示内容

公式サイトの説明によると

19世紀イギリスの画家ジョン・コンスタブル(1776-1837年)は、一歳年長のJ. M. W. ターナーとともに自国の風景画を刷新し、その評価を引き上げたことで知られます。
故郷サフォーク州の田園風景をはじめとして、家族や友人と過ごしたソールズベリー、ハムステッド、ブライトンなどの光景を写した生気あふれる作品の数々は、この画家が何を慈しみ、大切に育んだのかを雄弁に物語ってやみません。
含む全85点を通じて、ひたむきな探求の末にコンスタブルが豊かに実らせた瑞々しい風景画の世界を展覧します。

とのこと。

展示構成は以下の通り。

  1. イースト・バーゴルトのコンスタブル家
    1. 初期の影響と同時代の画家たち
  2. 自然にもとづく絵画制作
    1. 同時代の画家たちによる戸外製作
  3. ロイヤル・アカデミーでの成功
    1. ハムステッド、およびコンスタブルと同時代の画家による空の研究
  4. ブライトンとソールズベリー
  5. 後期のピクチャレスクな風景画と没後の名声
    1. ロイヤル・アカデミーでの競合
    2. イングランドの風景
    3. 晩年

コンスタブルの生家は製粉業を営む裕福な家だった。彼が生まれ育った場所は牧歌的な風景が広がり、広がる野原、蛇行する川など、自然豊かなところでもあった。
これらは彼が描いた両親の肖像画。

イングランド東部で生まれ育ったコンスタブルは、その土地の風景に魅了され、風景画を描き始める。当時の美術界では歴史画・肖像画が良しとされていた時代。それでも彼は画材を戸外に持ち出し、作品を描いていく。

気に入った場所・風景は何度も描いている。見る角度を変え、近づいたり遠ざかったり。

風景画にのめり込み、展覧会出品様の大型作品も戸外で詳細まで描き込んだりしていた。風景画は自然の姿をそのままに写しとることが重要だとの考えからだ。

だが、結婚し、ロンドンで生活を始めると、画家として食べていくためには好きなものだけを描いている訳にはいかなかった。彼は多くの肖像画も描いている。

もちろん、風景画も描き続ける。そしてそんな努力は世間にも認められるようになり、ロイヤル・アカデミーの準会員に選出されるに至る。
彼の描く風景画は、特に木々の描き方が細密で特徴的だ。葉の一枚一枚、樹皮の模様までもが詳細に描き込まれている。それでいて全体として風景画としての構図がきっちりしている。

画壇における彼のライバルは、かのウィリアム・ターナーだ。1832年のロイヤル・アカデミー展で二人の作品が並んで展示される。コンスタブルの描いた「ウォータールー橋の開通式」が色鮮やかで、ターナーの作品「ヘレヴーツリュイスから出航するユトレヒトシティ64号」は空と暗い海面、そして船舶というもの。ターナーは慌てて赤いブイを海面に描き、色を足したのだとか。
この二枚が並んで展示されるのは、ロンドン以外では本展が初めてだ。

ロイヤル・アカデミーの正会員に選ばれてからは、風景画を描き続けるものの、想像力で画中のモチーフの配置を換えてみたり、そこにはないものを描き足したりして、よりピクチャレスクな絵画を描いていく。

なお、この「虹が立つハムステッド・ヒース」は唯一、撮影可能です。注意書きに従ってどうぞ。

こうしてコンスタブルは、ターナーらとともにイギリス絵画の一時代を築き上げていったのだった。

これは、彼が使ったパレット。

感想

十九世紀イギリスの画家と言えばウィリアム・ターナー。何度か企画展もあり、ちょこちょこ参加している。あのモクモクの雲、好きです。

ですが、コンスタブルさん、全く知りませんでした。ターナーさんとは同時代の、同じ英国で競い合った“ライバル”だったんですね。それを知って、勝手に親近感が沸きました。

製粉業を営む父親の支援もあって、戸外での油彩画制作の画材や、活動拠点(父親の製粉所だったそうです)には困らなかったとか。そして、そんな万全な体勢(?)で、野外での絵画制作に打ち込んでいき、さらには“研究”に没頭。ガラス板を使って正確に風景をスケッチ、それを紙に写して描いてみる、なんてこともしていたそうです。そしてそして、雲の動きや姿に魅了されて、その表現を追求。雲だけを描いた作品も出展されていました。

十九世紀も後半の、印象派の時代になれば絵の具もチューブ入りになっただろうし、戸外での絵画制作も普通のことになっていただろうけど、コンスタブルさんの時代はまだまだ大変だったんじゃないかな。キャンバスも、厚紙を土台に紙を貼ったものだったり、他の画家たちは扱いやすい水彩画を好んだそうだ。そんな中でも油彩画に拘ったコンスタブルさん、かなりの頑固者なのか、求道者なのか、オタクなのか、どんな人だったのでしょうか。自画像では、キッとなにかを見据える横顔が、ちょっと気難しい印象を与えていますが。

さて、風景画というと何となく「どれも似たようなもの」「観ていると飽きちゃう」という気がしないでもない。確かに、そんな感想も否めない面はあります。でも、単純に「描かれている場所はどんなところ難だろう?」「雲の動きが感じられる気がする」「こんな川べりを散歩したいな」などと、好き勝手に想像しながら観ていくと、意外と(?)楽しめるもの。私は風景画、嫌いじゃないです。
コンスタブルさんは、一時期は写真のように正確に風景を写し撮ろうとしていたようで、その努力には申し訳ないけど、細部よりも全体の雰囲気を楽しむ方が私には向いているみたい。曲がりくねった川や遠くの教会などの景色は、画に入り込んで、その場でその風景を眺めている気分になれる。COVID-19のせいでしばらくプライベートな旅行はもちろん、出張にも出掛けていないので、余計にそんな感じがするのかも知れない。
そんな意味で、バーチャルトリップの気分を味わうためにこの企画展を観るのもいいかも。あと、とりあえず、コンスタブル v.s. ターナーの一騎打ちの現場は一見の価値ありでしょう。今回も楽しめました。

美術展情報

コメント

  1. 中野潤子 より:

    この美術館は何度か行ったことがあります。近くで高校時代のクラス会をしているので。

    • bunjin より:

      丸の内のお洒落な場所にありますからね。
      私はスタバくらいしか入ったことがなくて。