恵比寿ガーデンプレイスにある東京都写真美術館で「W. ユージン・スミスとニューヨーク ロフトの時代」展を観てきました。
展示内容
公式サイトによると、
1954年に『ライフ』誌を退いたスミスは、ニューヨーク・マンハッタンのアパート、通称「ロフト」に移り住みました。そこは、セロニアス・モンクやマイルス・デイヴィスをはじめとするジャズ・ミュージシャン、サルバドール・ダリや抽象表現主義の画家たち、ロバート・フランクやダイアン・アーバスなどの写真家まで、時代を担う多彩な芸術家が集う場となり、頻繁に行われるジャム・セッションや交流の様子をスミスは写真に収めました。
とのこと。
展示構成は以下の通り。
- イントロダクション
- 第1章 偉大な都市
- 第2章 ロフトの時代
- 第3章 Let Truth Be the Prejudice
- 第4章 水俣─報道と芸術の融合
ユージン・スミスというと、戦場カメラマンをしていた時に重傷を負い、その後の長い療養生活ののちに「The Walk to Paradise Garden(楽園への歩み)」の一枚で写真家として復帰した人、という話が有名かと思います。幼い子供二人が暗い茂みを抜け出し、光の中へと歩いていく後ろ姿はいろいろなストーリーを思い浮かばせる作品ですよね。

その後、アルベルト・シュヴァイツァー博士の活動を現地で取材し、LIFE誌にシリーズとして掲載される。ところが掲載はされたがスミスはその“見せられ方”に強い不満を持ち、それが引き金となってLIFE誌を離脱したようです。芸術志向の彼と、LIFE誌の編集方針はもともと合わないものがあって、以前からぎくしゃくしていたようで、この件だけが原因ではなさそうですが。

なんだかんだでLIFE誌を去った彼がたどり着いたのが今回の企画展のメインテーマにもなっているニューヨークのロフト。その時の彼の家のイメージを再現したのがこちら。まさに“それっぽい”感じです。

ミュージシャンなど多様な芸術家たちとの交流で生まれた作品だけではなく、、市井の人々の姿も捉えた写真もたくさん。彼自身が自分の芸術表現を作り上げるうえで、いろいろと試してみていたのがこのロフト時代のようです。

そして、ジョニー・デップ主演で映画にもなった「MINAMATA」は、熊本県水俣市で起きた水銀中毒(いわゆる水俣病)を取材した写真集。
映画の中の彼はロフト時代、飲んだくれて荒れた生活を送っていたように描かれていましたが、実際はこのころすでにというか、以前からの“社会派”の作品も撮っていたようです。アイリーン・美緒子・スミスも関わって日本で回顧展を開いた際に水俣病の問題をしり、ロフトを引き払って水俣にやって来たのだそうです。

MINAMATAの作品も多数展示されていました。彼は3年間、水俣で暮らしながら取材を続けたそうで、それぞれの家族との信頼関係が築けていたからこそこれら作品が撮れたのでしょう。

感想
東京都写真美術館で「生誕100年 ユージン・スミス写真展」を観たのは2017年。
映画「MINAMATA」を観たのは2021年。
そして今回の企画展。ユージン・スミスがより近くに感じられるようになってきました。人生山あり谷ありとはよく言われるけど、まさにそんな感じの写真家だったのかな。大けがして挫折しかけてからのカムバック。自身の信じる芸術性を通そうとする余りの周囲との衝突。そんなことを観終わったあとに感じたのでした。
あと単純に、芸術家たちを写した作品群はとてもかっこいいと思った。ジャズプレイヤーって、なんであんなに“絵になる”んでしょうね。と言いつつ、シリーズ「ピッツバーグ」の中のセルフポートレイトのユージン・スミスはさらにかっこいい。ミュージシャンにしろ、写真家にしろ、我が道を進んでいる人はかっこいいと言うことなのかな。
MINAMATAの作品群は観ていて辛くなるものが多いのですが、避けてはいけないですね。先人たちが誤ったことをきちんと知り、我々はそれを繰り返さないようにしなければならない。
ロフトの時代に芸術を追究していたユージン・スミスですが、社会正義を問うジャーナリズム精神は「カントリー・ドクター」や「慈悲の人 シュヴァイツァー」の頃から彼の中にしっかりと根付いていたのでしょう。そして、どちらも人々の“日常”に密着するという手法は共通しているのかもしれません。
彼の人となりを再認識する企画展でした。
そうそう、東京都写真美術館の一階ホールでは映画「MINAMATA」が上映されるそうです。こちらもおすすめ。
写真展情報
- 会期:2026/3/17 (Tue) – 6/7 (Sun)
- 開館時間: 10:00 – 18:00(木曜日、金曜日は20:00まで))
- 休館日: 月曜日
- 料金 : 一般700円 学生 560円 高校生・65歳以上 350円 中学生以下 無料
- 公式サイト : W. ユージン・スミスとニューヨーク | 東京都写真美術館
- 参考図書




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