「内藤コレクション展Ⅱ 中世からルネサンスの写本」で豪華な写本を堪能

内藤コレクション展Ⅱ 中世からルネサンスの写本 美術展・写真展

上野の国立西洋美術館で「内藤コレクション展Ⅱ「中世からルネサンスの写本 祈りと絵」」を見てきました。

展示内容

医大の教授でもある内藤裕史氏が自らのコレクションを寄贈した西洋写本を紹介・展示する企画展の第二弾。一回目は昨年(2019年)に開催された「内藤コレクション展 ゴシック写本の小宇宙」。その後、長沼昭夫氏の寄付で追加購入された作品も含み、今回の企画展が構成されている。

なお、国立西洋美術館の常設展示作品と同様、本展でも写真撮影OK(フラッシュ、三脚は禁止)です。

公式サイトの説明によると、

今回の展示では、15-16世紀の西ヨーロッパ(イギリス、フランス、ネーデルラント[現在のベルギーとオランダ])で制作された作品が中心となります。特に多くを占めるのは、時祷書に由来するリーフです。時祷書とは、一般の信者が日々の定められた時間に朗読する、聖書の抜粋や祈祷文などを収めた書物です。主な注文主は王侯貴族や裕福な市民であり、彼らの嗜好を反映した華麗な装飾が目を惹きます。また、15-16世紀のヨーロッパではルネサンス美術が花開きましたが、影響は写本挿絵の世界にも及びました。出品作の中にも、その様式的特徴である、より自然で現実感のある人物描写や広がりのある空間表現をもつものが見出されます。

内藤コレクション展Ⅱ「中世からルネサンスの写本 祈りと絵」|国立西洋美術館

とのこと。

作られてから五百年は経過しているものばかり。そのため、“写本”と言いながらこのように書籍として形をきちんと保っている物は貴重だ。多くは一ページずつ切り離され、「リーフ」として残されている。

内藤コレクション展Ⅱ 中世からルネサンスの写本

というのも、現代の書籍とは異なり、本来は文字ばかりになるだろうページにも、非常に凝った装飾が為されている。イニシャル(文頭の一文字)を大きく強調して挿絵と一体化させていたり、テキストの周りの枠・余白に装飾を施したりと、非常に華やかだ。

内藤コレクション展Ⅱ 中世からルネサンスの写本

日々の日課を記した(だけの)時祷書にしても、装飾が施されている。カレンダーのように、各月日ごとに聖人の記念日だったり、キリスト教の祭事が記載されている“実用書”なのだが、眺めているだけでも楽しめる内容となっている。

内藤コレクション展Ⅱ 中世からルネサンスの写本

ミニアチュールと呼ばれる「挿絵」ももちろんある。ページ全体を使ったものが多く、より大きく、華やかなものとなっている。一枚ずつが一つの作品と呼べるだろう。

感想

現在、国立西洋美術館では「ロンドン・ナショナル・ギャラリー展」を開催中だ。私もこちらも観てきた。そして常設展も。だが、今回、お目当てだったのはこの「内藤コレクション展Ⅱ「中世からルネサンスの写本 祈りと絵」」の方だった。以前から興味のあった装飾写本だが、「中世パリの装飾写本」を読んでからますます気になる存在になっていたのだ。現在、DigiVatLibなどで、Webでも装飾写本を読む(眺める)ことはできるのだが、やはりそこは本物を実際にこの目で見てみたいと思っていた。そんな願いを叶えてくれたのがこの企画展。前回ももちろん、観に行った。そして今回も。

中世ヨーロッパはキリスト教の存在がとても大きかった時代。文化もキリスト教を中心に語られている。だが、それまで宗教関係者だけのものだった書物が、写本を一般向け(と言っても権力者や“富裕層”に限られるが)にも作成・販売する商売がフランスやイギリスでも興り、今回展示されているようなものが作られていった。注文主は自分の趣味に合わせ、またステータスを表す物として、写本をより豪華にしていった。現代で言えば、オートクチュールの高級服のようなものだろうか。フォーマルなドレス(キリスト教)という規制がありながら、自由に、そしてより豪華に飾り立てる対象という意味だ。
装飾写本のページを眺めていると、そんな時代の人々の様子が垣間見える気がする。ただ、実際にこれらを「本」として読もうとすると、派手な装飾のせいで目がチカチカしてしまう。また、イニシャルだけではなく、一般の文字の書体も判読が難しい物ばかりだ。慣れれば読めるようになるのだろうか。なんか、実際には挿絵や装飾だけを眺めて楽しみ、実際には読んではいなかったのではないかとも思えてしまう。彼らの識字能力がどの程度だったのか分からないが、金も権力もあったのだから文字の読み書きくらいできたのだろう。それでも、ここまでキラキラに飾り立てたものを作らせていたのは、眺めて楽しむ愛玩品としての存在(役割)が強かったのではないだろうか。

だが、それ故にこれら写本たちは、五百年の時を隔て、言葉も通じない我々日本人にも見て楽しめる存在になったのだろう。
装飾されたイニシャルだけを集めたフォント(?)があったら面白いかな。それこそ読みにくくってしょうがないか。でも、インパクトはありそう。

書物なのに、読めなくても楽しめる存在が装飾写本だ。今回もじっくりと楽しめた。

美術展情報

国立西洋美術館

コメント

  1. 中野潤子 より:

    美しいですね。じかに見たいものです。こういうものは津軽海峡を渡っては来ないんですよね。

    • bunjin より:

      パンデミックが収まったら是非。
      ただ、寄贈されて“収蔵品”となったこのコレクションですが、今後はどのように展示されるのか不明です。常設展示の一部になればいつでも見られるようになるのですが。