恵比寿ガーデンプレイスにある東京都写真美術館で「森山大道の東京 ongoing」展を観てきました。
展示内容
公式サイトによると、
本展では、「ongoing=進行中、進化し続ける」をテーマに、今なお疾走し続ける森山大道がレンズを通してとらえ続けてきた街・東京を、カラーとモノクロの最近作を中心に展観します。尽きることのない森山大道の写真の魅力を存分にお楽しみください。
東京都写真美術館
とのこと。
森山大道と言えばハイコントラストや粗粒子画面による作風が「アレ・ブレ・ボケ」と形容される、現在も活躍中の写真家。
展示構成は、これまでに発表された四つのシリーズから抜粋した作品群と、これまでの代表作になっている。タイトルの通り、東京の今の姿を撮り続けている作品たちだ。
四つのシリーズとは以下の通り。
- 「記録」 1972-1973年、2006年
- 「Pretty Woman」 2017年
- 「K」 2017年
- 「東京ブギウギ」 2018年
最初の一枚は、あの「三沢の犬」だ。この作品のみ、東京都写真美術館の収蔵作品。
次に目を惹くのが、広い壁面一杯を埋め尽くす黒と赤の唇たち。「Lips」シリーズからの作品だ。
「Pretty Woman」の一枚、シルバーコーティングされたサングラスをかけたマネキンの顔を写した作品。レンズ部分が鏡面になっているため、そこには街の様子、そしてカメラを構える森山大道自身の姿も写っている。写真家の視線と、マネキンの視線が対峙しつつ、互いが移りゆく街の風景を見つめているのだ。
電車やバスの座席、街のベンチで隣り合わせた女性の足もとだけを写した作品群や、街中を歩く、厚底・ハイヒールの女性たちの後ろ姿の写真たちは街の象徴なのだろうか。
風俗店の店の前で座り込んでいる女の子や、スナックの扉を開けて中に入ろうとしている女性の後ろ姿は、街の物語の一ページなのだろう。
作者の視線は、そんな街の裏通りを眺め、時には車窓からネオン街を覗いて、東京という都市の中で彷徨っているようだ。
感想
コロナウイルス禍のパンデミックによって長らく休館していた東京都写真美術館がやっと再開した。以前は毎月のように通っていたので、数ヶ月間もご無沙汰したのは久しぶり。入館時には手の消毒と検温が実施されていて、スタッフはみなフェイスガード着用。館内の展示も、かなりスペースに余裕を持たせた感じだった。
記念すべき再オープンの最初の企画展(の一つ)が森山大道の作品展。今の東京の姿を写した作品たちだ。
ラブホテルや風俗店の連なる一角は、数千年の人類の歴史の中で連綿と続く街の表情の一つであって、その意味では都市を見つめる定点観測のようなものかもしれない。今を写しているようでいて、歴史も語っているのだろう。
そして、人で溢れている渋谷のスクランブル交差点や、賑わう新宿の繁華街の様子は、パンデミックの最中にいる今にあっては過去への憧憬のようにも感じられた。”ongoing”は、変わりゆく街の姿を写したというだけではなく、その作品群を観る側の意識や価値観の変化も相まって多層的な動き、うねりも表したテーマなのだろう。
それにしても、作者の持つフェティシズムは分かり易い気がする。女性の後ろ姿もそうだが、脚だけを写した作品の多いこと。しかも、ハイヒールを履いていたり、厚底だったりと、履き物にもこだわりがあるようだ。
美しいものを美しいと感じる意識、美味しいものを食べたいと思う欲求、可愛いものを愛でる心。それらと同様に、性的な魅力を感じさせるもの、欲望を刺激するものは誰にでもあるものだ。街の景色を写す時でも、視線は自然とそのようなものを探してしまう。
その意味でも共感できる作品たちだった。
写真展情報
- 会期:2020/6/2 (Tue) – 2020/9/22 (Tue)
- 開館時間 : 10:00 – 18:00(木曜日、金曜日は20:00まで))
- 休館日: 月曜日、8/11 (8/10, 9/21開館)
- 料金 : 一般700円 学生 560円 中高生・65歳以上 350円 小学生以下および都内在住・在学の中学生は無料
- 公式サイト : 東京都写真美術館
- 図録 : 3,000円(税別) ミュージアム・ショップにて発売中
コメント
行きたいですね。コロナ恨めしい。
自由に旅行ができるのはいつになるのやら。ワクチンができるまでは無理なんですかねぇ。
[…] […]