TOPコレクション 何が見える? 「覗き見る」まなざしの系譜

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TOPコレクション 何が見える? 「覗き見る」まなざしの系譜 美術展・写真展
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恵比寿ガーデンプレイスにある東京都写真美術館で「TOPコレクション 何が見える? 「覗き見る」まなざしの系譜」展を観てきました。

この企画展では写真撮影OKです。ただし、三脚・フラッシュNGなどの注意事項には従ってください。

展示内容

公式サイトによると、

本展では、東京都写真美術館が所蔵する、映像史・写真史に関わる豊富な作品と資料を中心に、「覗き見る」ことを可能にした装置と、それによって作り出されたイメージ、そして「覗き見る」ことからイマジネーションを広げた、作家たちの多様な表現をご紹介します。
(中略)
覗き見る装置は、現代の私たちをとりまくメディア環境はもちろん、写真・映像で表現をおこなう際の形式的な前提をも形作ってきたと言えます。現代にも受け継がれる、「覗き見る」まなざしの系譜を、写真美術館のコレクションから探求します。

東京都写真美術館

とのこと。

展示構成は以下の通り。

  1. 覗き見る愉しみ
  2. 観察する眼
  3. 立体的に見る
  4. 動き出すイメージ
  5. 「覗き見る」まなざしの先に

カメラの原型であるカメラ・オブ・スクラはいわゆるピンホールカメラだ。と言っても、まだフィルムはなく、箱の中の平面に投影された像を見るだけのもの。やがて、ピンホールからレンズを通して画像を見るようになっていく。

TOPコレクション 何が見える? 「覗き見る」まなざしの系譜

カメラ・オブ・スクラの反転させたような構造を持つ、覗いて楽しむ仕掛けの最初期の物としては、十七世紀末のピープショーが挙げられる。のぞき穴から写真や絵を見るのだが、レンズの効果で奥行きがあるように錯覚される。

さらに立体視効果を上げようと、平面の絵ではなく、こんな風に何枚もの絵を間隔を置いて並べた仕掛けも生まれてくる。

TOPコレクション 何が見える? 「覗き見る」まなざしの系譜

時代はくだり、写真は“瞬間”を捉えることができるようになる。肉眼では見ることができない(正確には認識することができない、と言うべきか)世界も覗き見ることができるようになった。

TOPコレクション 何が見える? 「覗き見る」まなざしの系譜

さらには、遙か彼方の月の表面までもカメラを通して見ることができるようになった。覗き見たいという欲望の強さはその限度を知らない。

ピープショーでも奥行きがあるような錯覚に陥ることができたが、その程度では我慢できないのが人の性。物を立体的に見たいという欲求から新たな仕組み(ステレオスコープ)が生まれてくる。

TOPコレクション 何が見える? 「覗き見る」まなざしの系譜

ステレオスコープは日本にも伝わり、日本における写真黎明期の写真家たち(下岡蓮杖など)も作品を製作している。
このコーナーではステレオスコープの簡易版を使って、実際に昔の作品を“立体視”して見ることができる。

TOPコレクション 何が見える? 「覗き見る」まなざしの系譜

こうなってくると、今度は動いているところを見たくなる。そうして映画が生まれてくるわけだが、それに至るまでにも色々な工夫が為された。これはキノーラと名づけられたもの。いわゆる“パラパラ漫画”方式で動いているように見せる訳だ。専用のリールがなんとも面白い。

TOPコレクション 何が見える? 「覗き見る」まなざしの系譜

「覗き見る」まなざしはついに身体の中にまで注がれるようになった。

実際にはないものも見たくなってきたのだろうか。ミニチュアの“特撮”からCGへと進んで行く。

TOPコレクション 何が見える? 「覗き見る」まなざしの系譜

「戦艦ポチョムキン」の一場面を再現したもの?

TOPコレクション 何が見える? 「覗き見る」まなざしの系譜

感想

東京都写真美術館の収蔵品展だ。今回も楽しい企画展になっている。プリントされた写真を普通に見るのではなく、見方を工夫してより楽しもうとした先人たちの知恵を学んでいけるようになっている。

実際に覗いてみて、昔の作品を鑑賞できるようになっているのが言い。ピープショーも、レンズを通して見るのと、素で見るのでは全然違うと言うことが分かった。そして、現代の我々でもへぇと思えるのだから、当時の人びとが行列を作って、料金を払って覗き見たその気持ちもなんとなく理解できた。百聞は一見にしかず、と言うことか。

ステレオスコープのあの仕組み、どのように思いついたのだろうか。ちょっとずらして取った二枚の写真を並べて、左右の目の視差の違いを利用した訳だが、最初にこれを思いついた時にはどのようなことが起きていたのだろうか。目が立体を認識する仕組みから“演繹的”に導き出したのだろうか。それとも偶然にちょっとズレて写した二枚の写真を並べてみていたらハッと気が付いたのだろうか。

パラパラ漫画の“原画”を描いた職人技にも感心。手描きアニメの大変さは、ジブリスタジオの作業の様子なんてドキュメンタリーで見てきた。でも、そんな作業のやり方が確立していない時代にあれだけの枚数を描き上げるとは。そうやってできたあのリール。どのくらいの値段で売られていたのだろうか。そんなところも気になってしまった。

写真の歴史を勉強することのできるこの収蔵品展。今回もまた違った着眼点で楽しませてもらいました。なるほどねぇ、と感心することがなんども。いや、面白かった。

写真展情報

  • 会期:2023/07/19 (Wed) – 2023/10/15 (Sun)
  • 開館時間 : 10:00 – 18:00(木曜日、金曜日は20:00まで))
  • 休館日: 月曜日
  • 料金 : 一般700円 学生 560円 中高生・65歳以上 350円 小学生以下および都内在住・在学の中学生は無料
  • 公式サイト : 東京都写真美術館
  • 図録 : 2,200円(税込)

コメント

  1. 中野 潤子 より:

    10月までですか。毎年11月に行く機会があるのですが、合いませんね。東京に住まないと駄目ですね。

    • bunjin より:

      十一月だと、次の企画展の最中ですね。さて、どんな作品が並ぶのでしょうか。