「サマーフィルムにのって」 観た人誰もが“あの頃”に戻れる青春のめり込み系作品だ

サマーフィルムにのって 映画・演劇
以下の内容は、いわゆる「ネタバレ」を含んでいます。

★ あらすじ

高校生の“ハダシ”は映画部のメンバー。だが、文化祭に向けて彼女が提案した時代劇「武士の青春」は、ライバル監督“花鈴”の青春キラキララ恋愛ものの台本に、部員たちの投票で惨敗してしまう。

ハダシは大の時代劇ファン。推しは勝新太郎。そして、天文部所属でオタク気質の“ビート板”と、剣道部エースの“ブルーハワイ”の二人と、彼女たちの秘密基地で時代劇鑑賞をするのが日課だった。
でも、どうしても自分の映画を製作したいという想いを諦めきれずにいたハダシは、映画館で見かけた謎の青年“凛太郎”を主人公役にスカウトし、自分たちだけの力で映画を作ることを決意したのだ。
ハダシたち三人は、主人公のライバル役に“ダディーボーイ”を、やたらと耳の良い“駒田”・“増山”を録音担当に、そしてなぜか自分の自転車をデコトラのように飾り立てている“小栗”を照明担当に引き入れた。

撮影がスタートするも、初めはドタバタの連続。それでも、徐々にみんなの気持ちが一つになっていき、「自分たちの映画を作るんだ」という想いが強くなっていく。ブルーハワイの殺陣指導や、彼女が連れてきた剣道部員のエキストラの助けもあって、斬り合いのシーンも迫力あるものになっていった。「これならば良い映画になる」とみんなが思えるようになっていった。
だが、思いもかけない展開となる。実は凛太郎はタイムマシンに乗ってやってきた未来人だったのだ。未来では映画がなくなってしまっている。凛太郎は、巨匠監督となっていたハダシの“古典”作品を観て感動し、ハダシのデビュー作である「武士の青春」が観たい一心でやってきたとみんなに告げたのだ。
その告白はハダシにとって、自分が映画監督として成功するということよりも、未来では映画文化がなくなってしまっていると言うことにショックを受けるものとなった。

「武士の青春」のラストシーンをどうするかで悩んでいたハダシは、急に映画を撮ることができなくなってしまう。どうせ未来では映画はなくなるのだから、自分のやっていることは意味がない、と。
せっかく、海辺の宿で合宿までして撮影をしていたハダシ班のみんなだったが、途方に暮れてしまう。こんなことで映画が完成するのだろうか、文化祭でのゲリラ上映はどうなるのか。そして、肝心のクライマックスシーンはどのように描かれるのか。

もちろん、ハダシたちの夏はこのままでは終わらなかった。そして、「武士の青春」のラストは誰も想像しなかった形で描かれるのだった。

★ キャスト&スタッフ

  • 出演:伊藤万理華, 金子大地, 河合優実, 祷キララ, 小日向星一, 池田永吉, 篠田諒, 甲田まひる, ゆうたろう, 板橋駿谷
  • 監督:松本壮史
  • 脚本:三浦直之(ロロ), 松本壮史
  • 制作:今野義雄, 小西啓介, 多湖慎一, 川瀬賢二, 篠田学
  • 音楽:剣持学人
  • 美術:飯森則裕
  • 主題歌:Cody・Lee(李)異星人と熱帯夜

★ 感想

伊藤万理華さんのファンである私は、情報解禁となった去年からずっと公開を楽しみにしていた。デジタル映画鑑賞券 – ムビチケの販売が始まったらすぐに購入して、公開を待っていたのだ。
その後、この作品は世界各国の映画祭で上映され、好評価を得ているとのニュースを目にするようになった。第33回東京国際映画祭(2020)でもかなりの評判だったとか。
もちろん、映画祭での評価と、自分の趣味とが一致するとは限らない。評判が良くても、観てなんか違うなと思っちゃうものもあるでしょう。
いや、とは言えこれだけ好評価なのだからと、観る前から期待はやっぱり高まっていたのでした。

結果、面白かった。
青春映画ってどうしてこうもワクワクし、ホロリと泣きそうになり、のめり込んじゃうんでしょうね。単純に、誰もが大なり小なり、青春時代と呼ばれる若かりし頃に経験した記憶を持っていて、それにダイレクトに共鳴するからなのでしょう。「心の琴線に触れる」とはこのこと。成功体験だけじゃなく、挫折して夢を諦めたなんて想い出も、この作品を観ることで昇華されていく感じ。

理由なしに、好きなものは好き。自分のやりたいことをやりたいんだ、と言うハダシの純粋で危なっかしい姿にいきなり引き込まれてしまう。喜怒哀楽がストレートに顔に、いや全身に表れる伊藤万理華の演技のお蔭でしょう、観ているこっちまで笑ったり泣いたりと忙しい。心の琴線に触れられるどころか、鷲づかみにされてグラグラと揺さぶられてしまう。こりゃ、引き込まれる訳です。
キャラクターがはっきりしているハダシ班のメンバーも良い。そして、ライバル役の花鈴も実は良い子。悪者がいないのだ。みんながみんな、青春を謳歌している。夏の日の想い出はこんなにも眩しいものなのだろうか。

「自分たちの映画を作るんだ」、「映画を未来に残すんだ」というメッセージが、映画業界の人たち・映画ファンには特に響いたのかも知れません。それが各国での好評価の一因でもあったのかも。彼らも、自分たちの昔を思い出していたのかな。
でも、そんな贔屓目を差し引いてもこの作品は面白い。自分が伊藤万理華ファンだと言うことを置いておいても、やっぱり面白い。COVID-19のパンデミックに鬱屈した状況だからこそ、爽やかさが際立つなんて事もあるけど、それを抜きにしても良いですよ、この作品。

とにかく、観るべき一本です。

★ 公開情報

サマーフィルムにのって

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