菊池寛実記念 智美術館 SNS鑑賞イベントに参加して、「第9回菊池ビエンナーレ 現代陶芸の<今>」展を観てきました
展示内容
菊池寛実記念 智美術館は現代工芸専門の美術館。そして、二年に一度開催しているのが「菊池ビエンナーレ」展です。現代工芸作品の公募展で、九回目となる今回は279点の応募があり、そこから54点が入選、さらにその中から大賞1点、優秀賞 1点、奨励賞3点が選ばれました。この企画展では、入選作54点が展示されています。
前回、第八回の模様は下記の記事を参照してください。
入賞作品
大賞:猪倉髙志《線を解き放つ》
文字通りに“エッジの効いた”作品です。いったん、普通に(?)粘土で花瓶の形を作り、あとから削ってこの形にしたそうです。それにしても、こんなに厚いところ・薄いところがあってもちゃんと焼けるんですね。
陰影も含め、存在感のある作品です。

なお、この作品だけは「写真撮影可」となっています。注意書きに従って記念に一枚どうぞ。観る角度によって陰影の印象が異なるので、一枚と言わず、何枚もどうぞ。

優秀賞:梅本孝征《色絵流加彩昇落器》
こちらもユニークな形状の器。薄い側面は轆轤による形成。磁土が充分に乾いたところでこの切り込みを入れたのだそうです。

奨励賞:中里浩子《はなもよう》
写真では色が飛んじゃっていますが、十二色もの化粧土を使って、虹のような模様が描かれています。

奨励賞:原田雅子《ながるる》
なんとも不安定な形状。そしてなぜか人のようにも見えるフォルム。目が描かれている訳ではないのに、なぜか見られている気がしてならない。

奨励賞:津金日人夢《青瓷平壷-水天彷彿-》
「水天彷彿」とは、空と海との境目が朧気になっている様子だそうです。下側の濃いめの釉薬と、上側の水色の釉薬が波のように揺らぎながら接していて、ゆったりとした気分にさせてくれます。

私が気に入った作品
アイザワリエ「貝寄風」
これ、陶器なんですよ。いや、不思議な形ですよね。このモフモフですが、ベースとなる塊に針を刺すようにトゲトゲを付け、そこに釉薬をつけて(盛り付けて?)作っていったのだそうです。説明を聞いても、「それでこれになるの?!」となってしまいます。

松澤恵美子「脱皮」
さらにこちらも「どうやって作ったの?」となる作品。このニョロニョロしているやつ、思わず触ってみたくなっちゃいます。もちろん、ダメですけどね。陶器でこれを作ろうと思ったことからして驚き。

田原形子「シュレディンガーの兎 vol.2」
もう、存在函数が箱の外に染み出しちゃっていますが、これまた凝った造型。箱(カゴ?)は金属のような質感(の見た目)をしていて、対称的に兎はちょっとモフモフ。

酒井智也「タうえふわたア」
子どものオモチャのような原色で彩られたオブジェたち。これ、穴が開いているから一輪挿しになるのかな?でも、これに負けない花を選ばないといけないからなぁ。

三浦義広「獅子と狛犬」
ちゃんと、阿形の獅子は角がなく、吽形の狛犬は角がある。表情はとってもユーモラス。

青木岳文「Vase」
前回も、前々回も入選されていましたね。見るからに脆そう、折れちゃいそう、という見た目を逆手にとって、ここまで「折れちゃった」感じになっています。いや、すごい。

伊藤雄志「練込大鉢」
ある意味、王道の陶器。この色合いが気に入りました。スカイブルーなのかな、この一筆(?)のお蔭でとても爽やかな感じになっています。これでカルボナーラを食べたら美味しそう。

感想
COVID-19のせいでブロガー向け内覧会は前回の「菊池ビエンナーレ」展以降、行われていませんでした。二年経ってやっと開催されたのでありました。
前回よりも「これ、どうやって作ったの?」と思う作品が増えた印象。陶芸って、粘土で捏ねている時は好きな形を作り易いのだろうけど、そのあと「焼く」工程がありますからね。サイズが縮んじゃうし、ひびが入ったり、割れたりしちゃうから“造型”という点ではかなり制約のきついものじゃないかと思います。そこをみなさん、果敢に挑戦しているんだから恐れ入ります。
自分が作りたい形状を想像し、それを実現するためにはこの材料とこの製法が、という風に考えていくそうですが、材料調達は何とかなるかも知れないけど、製法の習得にはかなりの期間が必要なはず。一度決めたら、そうそう「やっぱりこっちが良かった」と乗り換える訳にはいかないでしょう。最初の選択が“運命の分かれ道”なのかな。
陶芸展というと、難しい顔をしたおじいちゃんが茶碗と睨めっこしている、そんなステレオタイプが浮かんできそうですが、見ての通りに現代陶芸は“エッジの効いたアート作品”ばかり。かなり面白いですよ。特に公募展の場合は個性豊かな作家さんたちの作品が並ぶので、自分の好みの作品を見つけることができると思います。
それに、この智美術館の展示室にはガラスケースはほとんどありません。作品がドンと置かれていてじっくりと覗き込むことができます。展示室を見るだけでも価値があるんじゃないかな。一度、見てみてくださいな。場所はホテルオークラの向かいです。
受付横のショップコーナーでは、今回の「菊池ビエンナーレ」展出品作家さん達の作品を購入することができます。あのモコモコはさすがに売っていないようですが、“用の美”ということで茶碗、コーヒーカップ、一輪挿しなどが並んでいました。マグカップ、欲しいなぁ。

美術展情報

- 会期 : 2021/12/11(Sat) – 2022/3/21(Mon)
- 開館時間 : 11:00 – 18:00
- 休館日 : 月曜日, 12/27 – 1/3, 1/11 (1/10, 3/21は開館)
- 料金 : 一般 1,100円 、 大学生 800円、 小中高生 500円
- 公式サイト : 最新の展覧会|展覧会|菊池寛実記念 智美術館
- 図録 : あります。(値段を聞き忘れちゃいました。ごめんなさい)
- 併設カフェ:【Official Site】茶楓(サフウ)salon Safu(虎ノ門・神谷町・溜池山王 / カフェ)
以前はフレンチレストランでしたが和風カフェに変わっていました。カフェ飯、美味しそう。

コメント
年末に美術館に行く余裕がありません。それにこちらはめぼしい展示もないので、来年は上京したいのにまたへんてこなコロナ菌が増えています。もう解放されたいです。
ぼちぼち、インフルエンザ並みになっていくんじゃないでしょうか。