舞台「六番目の小夜子」:鈴木絢音の瞳に魅入られてしまいました

六番目の小夜子 映画・演劇
以下の内容は、いわゆる「ネタバレ」を含んでいます。

あらすじ

演劇部部長の三年生、花宮雅子が通う高校には「サヨコ伝説」と呼ばれている不思議な言い伝えがあった。三年に一回、生徒の中から一人、その年の「サヨコ」が人知れず選ばれる。「サヨコ」には三つの約束が決められている。

  1. 始業式の日に赤い花を生ける
  2. 文化祭で「サヨコ」の舞台を上演する
  3. 次の「サヨコ」を指名する

というものだ。これらを、自分が「サヨコ」であることを知られずに行わねばならない。うまく行けば、その年の進学率は上がり、“良いこと”が起きる。だが失敗すると進学率は大きく下がってしまうと言うのだ。しかも、十数年前、二番目にサヨコとなった転校生の津村小夜子は、文化祭で「サヨコ」を演じるはずだったのに、前日、事故で亡くなってしまう。そんなことがさらに「サヨコ」の物語を伝説化させていったのだ。

そして、今年は「六番目のサヨコ」の年だった。始業式の朝、教室に、そして雅子のいる演劇部の部室にも赤い花が生けられていたのだった。そんな言い伝えなど意味がないと否定する雅子は、自分が書いたシナリオを使った劇を文化祭で上演したいと思っていたのだ。だが、動揺する部員たちは「サヨコ」の舞台を演じるべきだと言い出した。

ざわつく生徒たち。そんな中、さらにざわつかせることが起きる。雅子たちのクラスに転校生が入ってきたのだ。神戸の超有名進学校から転校してきた彼女の名前は「津村小夜子」。そう伝説の“サヨコ”と同姓同名だったのだ。しかも、彼女は演劇部に入部した。その時から演劇部では不思議なことが起こり始める。あれだけ仲が良かったのに、「サヨコ」の芝居を拒否する雅子は部員たちから激しい抗議を受けてしまう。
あちこちで友情に、恋愛にヒビが入ってしまう。そしてそこにはいつも津村小夜子の姿があった。

「サヨコ伝説」は誰が、何のために始めたのか。六番目のサヨコは誰なのか。今年のサヨコは三つの約束を実行できるのか、そして津村小夜子と二番目のサヨコとの関係は?

キャスト&スタッフ

  • 出演 : 鈴木絢音、尾碕真花、高橋健介、熊谷魁人、山内瑞葵、飛葉大樹、仲美海、大原由暉、志田こはく、花崎那奈、緑谷紅遙、山本涼介、森下能幸
  • 総監督 : 鶴田法男
  • 演出 : 井上テテ
  • 脚本 : 小林雄次
  • 音楽 : 小畑貴裕

感想

恩田陸の1992年のデビュー作としても、昨年の再放送も人気だった「ドラマ愛の詩 六番目の小夜子 | NHK放送史(動画・記事)」(DVD 六番目の小夜子)としても、どちらも大人気。その名作が舞台版となった訳だが、ドラマよりも原作に近い形で、さらにはホラー色を強めた感じ。舞台セットは演劇部の部室と、校庭の隅にある石碑の二シーンのみ。その限られた空間に話をうまく収めていた。
新国立劇場の小劇場は400席程度の大きさ。かなり舞台が近く感じられる。しかも、今回は前から何番目かの席だったので、まさに目の前で演じてくれている感じ。

原作では、受験生というプレッシャーに苦しみつつも、恋に友情に、そして文化祭準備に打ち込むひたむきさにと、高校生という多感な時期の葛藤がテーマになっていた。ドラマ版も然り。
そして、今回の舞台版も基軸はそこにある。そしてその上で、ホラー仕立てにして調子の上げ下げを強調した形になっているので、より感情の起伏がはっきりとしていて、舞台の芝居として分かり易くなっていると思います。ホラー作品でお馴染みの鶴田法男が総監督をしているだけあって、おどろおどろしい演出が為されています。「サヨコ」は演劇部員たちや先生にまで取り憑いて、自分の“想い”、いや“恨み”を晴らそうとしていく。効果音や照明も相まって、何回かドキッとさせられました。

NHKドラマ版では栗山千明が演じていて、あちらもはまり役だった「津村小夜子」役。今回は、普通の転校生である津村小夜子と、「サヨコ」とを演じ分けていた鈴木絢音が良かった。端整な顔立ちでクールなイメージが、頭脳明晰・容姿端麗・運動神経抜群という設定の津村小夜子にぴったり。瞳の色がブラウンで、透明感があり、引き込まれる感じなのだ。「サヨコ」のおどろおどろしさと妖しげな美しさがよく出ていた。

あと、原作ではフラれて事件を起こしてしまう佐野美香子役を演じた仲美海も、原作ほどの出番はなかったものの、アンニュイな雰囲気が片想いの後輩役に合っていた。

あの原作をどんな風に舞台化するのかと思っていたが、NHKドラマ版とはまた違った雰囲気ながら、原作のストーリーを辿る形になっていて、馴染みやすかった。“青春時代”を描いた話は誰にでも感情移入しやすい。懐かしさを感じさせてくれる作品でした。

公演情報

  • DVD/BD

コメント

  1. 中野 潤子 より:

    「瞳に魅入って」ってとはお若いですね。