「Winny」 結局、なんのために訴えられたのか

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Winny 映画・演劇
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以下の内容は、いわゆる「ネタバレ」を含んでいます。

★ あらすじ

四十二歳で亡くなった、神とも呼ばれた天才プログラマー金子勇。彼がP2P技術を使って作り出したソフトウェア「Winny」は、誰でも簡単にファイル交換ができるとして、掲示板(2チャンネル)で評判となる。そして、映画や書籍などの著作物を違法に配布、ダウンロードできるソフトとして広まってしまった。

2004年、京都府警は著作権法違反で、Winnyを使ってファイルをやり取りしていた者たちを逮捕する。その際、金子勇も参考人として事情聴取を受けた。そして数ヶ月後、今度は著作権法違反幇助の容疑で金子勇自身が逮捕されてしまったのだ。

サイバー犯罪に詳しく、「ソフトの開発者が逮捕されるなんて、ナイフが殺人に使われたから作った職人が逮捕されるようなものであり得ない」と言っていた弁護士の壇俊光が金子勇の弁護をすることになった。早速、弁護団を結成し、事件に取り組んでいく。

金子勇は、プログラマーとしては天才であったが、一般常識に欠け、また人を疑うことをしない人だった。警察や検察に言われるままに調書にサインをしてしまう。「あとから訂正できるから」、「捜査に協力してほしい」と言われて、それを鵜呑みにしてしまったのだ。
裁判が始まってからも、検察側は訴追の核心をぼやかしている。弁護団の「Winny自体が違法なのか?」「何を論点にしようとしているのか?」の問いには全く答えない。

保釈にはなったものの、裁判が続いている間、金子勇はWinnyに触ることを禁止されてしまう。そして、証拠隠滅と思われないように親しい人びと(家族も含め)と連絡を取ることさえできなくなる。彼にとってプログラミングは生きることそのものだったのに、それを奪われてしまったのだ。裁判の行方は混沌としているし、次第に追い詰められて行ってしまった。

★ キャスト&スタッフ

  • 出演:東出昌大, 三浦貴大, 皆川猿時, 金子大地, 阿部進之介, 渡辺いっけい, 吉田羊, 吹越満, 吉岡秀隆
  • 監督:松本優作
  • 脚本:松本優作
  • 制作:伊藤主税, 藤井宏二, 金山
  • 原案:朝日新聞 2020年3月8日記事(記者:渡辺淳基)

★ 感想

とても興味深い話だった。確かに、どんな技術でも人びとの役に立つこともあれば、凶器となることもある。料理包丁は、殺人事件の凶器として“ポピュラー”だろう。その点で言えば、Winnyの開発、そしてWinny自体に違法性はなさそう。なのに彼は訴えられてしまう。映画の中でも結局、「なんで訴えられたのか?」は明らかにならない。ドキュメンタリーではないものの、事実を元に映画化しているので、全てがスッキリとできないのはしょうがない。とは言え、なにかヒントの形で提示しても良かったのではないかな。
未知の技術に対する漠とした不安、著作権違反が連続していることに対する「諸悪の根源」があるだろうという短絡的だが陥りやすい思考、“犯人”を決めたいという欲求、そんなものが彼に悪人役を負わせたのだろうか。

並行して進む警察の汚職に対する内部告発の話では、最後にWinnyのお蔭で“解決”する。このサブストーリーはWinnyを擁護するために入れられたのだろうか。その使い方によって、技術は役に立つ道具にもなるし、人を傷つける凶器にもなる、という話かな。

ということで、アピールするところを掴むのが難しい作品だった。「技術者は恐れることなく、これまでにない技術を作り、世に出していけ」というメッセージは分かるけど、何をやってもいいという訳でもないし、なかなか難しい。このままだとモヤモヤするので、もう一度、観ようかな。

現実の事件を下に作られた作品。実際、エンドロールには金子勇本人が語っている映像が使われている。なので、途中で席を立ってはもったいないですよ、最後まで観ましょう。

Winny

★ 公開情報

★ 原作本、他

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