サントリー美術館「根来 赤と黒のうるし」展

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美術展・写真展
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東京ミッドタウンにあるサントリー美術館で「根来 赤と黒のうるし」展を観てきました。
この企画展では入口のフォトスポット以外、すべての展示品は写真撮影NGです。

展示内容

公式サイトによると

中世に大寺院として栄華を極めた根來寺(和歌山県)で作られた質の高い朱漆器は「根来塗」と呼ばれて特別視されてきました。堅牢な下地を施した木地に、黒漆の中塗と朱漆を重ねた漆器(朱漆器)は、それ以前の時代から各地で作られてきましたが、江戸時代以降に「根来」の名で呼ばれるようになります。それらは、寺院や神社などの信仰の場で多数使われただけでなく、民衆の生活の中でも大切にされました。

とのこと。

展示構成は以下の通り。

  • 第一章 根来の源泉
  • 第二章 根来とその周辺
  • 第三章 根来回帰と新境地

漆塗りの木製品の歴史は古く、縄文時代にまで遡り、確認されている最古のものは7500年前に作られたとされる。赤(朱)は太陽を連想させる色であり、対して黒は闇の色として人々は捉えていたようで、特に朱漆塗漆器は宗教儀式に使われるようになり、権力の象徴ともなった。
第一章では神社で神酒を入れる瓶子などが展示されている。

時は下り、根来寺の僧徒たちが仏具として使うために朱塗りの漆器を作り、それが有名になった。そこから黒漆の下地に朱漆を塗り重ねる漆器は「根来」と呼ばれるようになったと言われている。当時の根来寺は栄華を極め、絢爛豪華であったとのことで、「根来」朱塗漆器も数多く作られている。

豊臣秀吉によって根来寺は焼き払われ、衰退する。だが、江戸時代初期には朱漆塗漆器としての「根来」が取り沙汰され、のちの時代にも大きな影響を与え続けた。江戸時代後期の『紀伊国名所図会』でも「根来」漆器が紹介されていて、一般の人々にも広まった漆器として認知されていたことがわかる。
そして、昭和の時代になっても著名人たちは「根来」の名品収集をしており、白洲正子や黒澤明のコレクションが展示されている。

感想

「根来」と聞くと鉄砲で有名な戦国時代の根来衆を先に思い出す。そんな彼らの拠点であった根来寺が漆器でも有名だったとは知りませんでした。

現在にも受け継がれている根来の漆器の技術を示すため、下地塗りから完成までの二十六工程を順に追える展示替されていて興味深かった。最初は白っぽい木彫りの椀なのが、下地を何度も塗っていくうちに黒くなっていき、最後に朱色の漆が重ねられて完成。いやぁ、こりゃ大変です。

そんな根来の漆器たちは使われていくうちに朱漆が部分的に剥げていき、下地の黒漆が見えてくる。それが唯一無二の模様となっていて、“味”が出てくるのだ。朱と黒だからこその高いコントラストがいいのだろう。「使用感がある」というのはネガティブな状況を指す言葉だが、「根来」の場合はハゲまでが新たな価値(風合い)を付加している。

子供の頃には我が家でもハレの日には漆器を使って料理が出されていた記憶がある。例えば正月の雑煮は黒塗りの漆器だった。だが、残念ながら今では一つも使っていない。今も雑煮は食べるが、椀は漆器を模したプラスチック製だ。
大事に保管されていたとはいえ、鎌倉時代の漆器が今もこうやって残っているわけだし、少々剥げてもそれが味となるのだから、漆器はまさに一生物の食器なのだろう。そう考えると多少高くてもコストパフォーマンスはいいのかもしれない。

漆器の良さを再認識させてくれた企画展でした。

美術展情報

  • 会期 : 2025/11/22(Sat) – 2026/1/12(Mon)
  • 開館時間 : 10:00 – 18:00(金曜日は10:00 – 20:00)
  • 休館日 : 火曜日、2025/12/30 – 2026/1/1
  • 料金 : 一般 1,800円、 大学生 1,200円、高校生 1,000円、中学生以下 無料
  • 公式サイト : NEGORO 根来 — 赤と黒のうるし サントリー美術館
  • 図録 : 2,800円

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