「美をつくし―大阪市立美術館コレクション」展 浪華の美意識に触れる

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美術展・写真展
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東京ミッドタウンにあるサントリー美術館で「美をつくし―大阪市立美術館コレクション」展を観てきました。
この企画展では一部作品が写真撮影OKです。会場に掲載されている注意事項に従ってください。

展示内容

公式サイトの説明によると

大阪市立美術館は、東京・京都に次ぐ日本で三番目の公立美術館として、昭和11年(1936)に開館しました。長年にわたり築かれたコレクションは、日本・中国の絵画や書蹟、彫刻、工芸など8500件を超え、時代も紀元前から近代まで実に多彩です。とりわけ関西の財界人によるコレクションをまとめて収蔵する点に特徴があり、美術館の敷地も住友家から大阪市に本邸跡地が寄贈されました。
(中略)
展覧会名「をつくし」は、大阪市章にもかたどられる「澪標みおつくし」になぞらえたものです。難波津の航路の安全のために設けられた標識「澪標」のように、美の限りをつくしたコレクションの世界へ身をつくしてご案内いたします。

美をつくし―大阪市立美術館コレクション サントリー美術館

とのこと。

展示構成は以下の通り。

  • 第1章:世界に誇るコレクション 珠玉の中国美術
  • 第2章:祈りのかたち 仏教美術
  • 第3章:日本美術の精華 魅惑の中近世美術
  • 第4章:江戸の粋 世界が注目する近世工芸
  • 第5章:はじまりは「唐犬」から コレクションを彩る近代美術

大阪の財界人から寄贈されたコレクションを中心に収蔵されているのが大阪市立美術館の特徴とのこと。美術館が建っている土地も、元は住友家の本邸だった場所だそうです。浪華の商人は太っ腹ですな。

中国美術は東洋紡績株式会社(現・東洋紡)の社長(阿部房次郎氏)や実業家の山口謙四郎氏のコレクションが中心。特に後者の石像彫刻コレクションは余り馴染みのないものが多く、面白かった。石窟とその中の仏を一つの石から彫り出したものは、当時の仏師(彫刻家?)の技量に感心する。大きさからするとイコンのように飾ったのだろうか。
また、「青銅鍍金銀 仙人」も山口コレクションの謎の(?)一品。何かの脚を抱えるように“取り付けられた”飾りだったのだろうか。それにしても、なぜミッキーマウスのような大きな耳をしているのかは良くわからない。仙人の特徴なのだろうか。

仏教美術はもちろん社寺からの寄贈品が多いが、弁護士・政治家だった田万清臣氏と夫人の明子氏の田万コレクションがこれもユニーク。金銅如来立像(?)は右手を高々と上げ、左腕はまっすぐに下ろしている。仏像に詳しくないので、コレが何を表すポーズなのか知らないのだが、背泳ぎをしているように見えてきてしまった。如来なので半裸になっているから、余計にそう見えてしまったのかな。

中近世美術のコーナーは色とりどり。「百鬼夜行絵巻」もあれば、「龍虎図屏風」や葛飾北斎の「富嶽三十六景 神奈川沖浪裏」があったり、「蟹子復讐の図」なんてのもありました。
「蟹子復讐の図」は、お伽噺の「さるかに合戦」がテーマなんでしょうけど、なんともユーモラスな表情の“ハサミ”や“うす”が笑えます。その割に“説明文”は漢文で書いてあって、変に格好つけているのがアンバランスでこれまた宜し。

江戸時代近世工芸のコーナーは細かい細工の作品が多く、単眼鏡を持っていかなかったのが悔やまれました。象牙の串や笄(こうがい)、印籠、根付などが一杯展示されていました。
根付のコーナーは全ての作品が撮影OK。でも、あまりに一杯あるので全部を撮るのはシンドイかも。私も何点かで諦めました。一番手前の根付けは“猿”なのかな。他にも、こんなに大きくて、ぶら下げていたら重くて大変だろう?!と思ってしまうようなものなど色々。

近代美術のコーナーでは、洋画のテクニックを取り入れた日本画の作品が何点か。
こちらは上村松園の「晩秋」。障子の補修に、花型に切った和紙を貼り付けている姿です。
これまた不勉強なのですが、なぜこれのタイトルが「晩秋」なのか分からない。明治の時代では、寒くなってきて、防寒のために障子を直すのが晩秋の恒例行事だったのでしょうか。うむ、当寺の習慣を知らないとピンとこないなぁ。

感想

個人のコレクションを中心にした収蔵品群と言うことで、コレクターの趣味が反映されていて、ユニークなものが多かった気がします。「美術史の中で重要で特徴的な作品を集めた…」という訳ではないだろう、きっと単に好きだからという理由で集められたものもあるでしょうから。その分、観たことないもの、珍しいものが並んでいた感じ。展示ポスターにも大きく書かれた「なにコレ」の文句に偽りなしでした。

私が特に気に入ったのは、上でも書いた、中国美術コーナーに展示されていた「石造 菩薩交脚像龕」です。“龕(がん)”とは、「仏像や経文を安置するために壁面や塔内に設けられた小室、あるいは屋内に安置するための容器」のこと(仏龕 – Wikipedia)。でっかいものだと、タリバンに爆破されてしまったバーミヤン石窟が有名ですね。で、展示されているのはもちろん、もっと小さなもの。家に飾っておいたら格好良いなぁと思ってしまいました。
また、名前の通りに右足を前にして両足を組む交脚(こうきゃく)の姿勢をしているんですが、これも意味が何かありそうで気になりました。手や指の形に色々と意味があるのは知っていたのですが、脚までは知らなかった。何を表すポーズなのだろうか?

という感じで、自分がコレクターになったつもりで「これは良いね。いや、これはないだろう?!」と言う雰囲気で見て行くのも一興かと思います。なかなか楽しい美術展でした。さすがはサントリー美術館。

美術展情報

コメント

  1. 中野 潤子 より:

    惜しい、11月21,22に上京予定です。上野のチケットが取れたら行きたいと思っています。知人の写真展を見に行きます。

    • bunjin より:

      東京国立博物館の企画展、凄い人気ですね。私も観に行きたい。