国立科学博物館 「和食 ~日本の自然、人々の知恵~」展

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和食展 美術展・写真展
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国立科学博物館で「国立科学博物館 「和食 ~日本の自然、人々の知恵~」展」を見てきました。

この企画展では一部作品を除いて写真撮影OKです。撮影NGとなっている作品を確認しつつ、注意して撮影してください。
また、三脚・フラッシュNGなどの注意事項にも従ってください。

展示内容

公式サイトによると

「和食」がユネスコ無形文化遺産に登録されて10年 。世界中でますます注目の高まる和食を、バラエティ豊かな標本や資料とともに、科学や歴史などの多角的な視点から紹介します。日本列島の自然が育んだ多様な食材や、人々の知恵や工夫が生み出した技術、歴史的変遷、そして未来まで、身近なようで意外と知らない和食の魅力に迫ります。

特別展「和食 ~日本の自然、人々の知恵~」

とのこと。

「和食」がユネスコ無形文化遺産に登録されています:農林水産省」ということで、登録十周年を記念しての今回の特別展は「和食とは何か。和食の過去・現在・未来は」というテーマを科学的に解き明かしていっています。

展示構成は以下の通り。

  • 第1章 「和食」とは?
  • 第2章 列島が育む食材
  • 第3章 和食の成り立ち
  • 第4章 和食の真善美
  • 第5章 わたしの和食
  • 第6章 和食のこれから

改めて「和食とは何か?」と問われると、答えはなかなか難しいもの。まずは食材を見ていきます。日本各地で採れる食材を使ったものがまずは和食の必要条件でしょう(十分条件ではないですが)。
昔から利用されてきた食材の一つが「キノコ」。実は、食べられるキノコと毒キノコを見分けるのは非常に難しいそうです。どのキノコに毒があるか否かは外見その他からだけでは分からないこともあるそうで、“先人たちの努力(と犠牲)”によって食用キノコが分かってきたそうです。

そんなトライアル&エラーのせいなのか、実は食べられるキノコでも食用としては余り用いられていないものもあるそうです。ポルチーニ茸の近縁種がその一つ。和食の味(日本人の味覚)には合わなかったのかも知れませんね。

野菜の多くは海外からもたらされたものが日本で広まっていったもの。昔から品種改良も進められ、数多くの品種が生まれていった。大根もその一つ。和食の食材として定着していくとともに、地域ごとの特産品も生まれ、ご当地ごとの料理が作り出されていきました。

海産物を食する文化は世界各地にありますが、日本で食べられている魚介類の種類は世界的に見ても多いのだとか。“マグロ”だけでも色々な種類のマグロを食しています。

発酵食品も、その国ごとの味が生まれるベースになっている。発酵が微生物の活動によるものということが知られる遙か昔から、経験によって微生物を使いこなして各種発酵食品を作り出している。そして、醤油や味噌は和食に欠かせない調味料となっていった。

酒(日本酒)も発酵食品の一つ。米をカビ菌によって発酵させることにより、醸造している。

かくして、縄文時代から現代まで、海外との交流を通して和食は発展していく。各時代で宗教儀式や供応の席などで饗された料理を通じてその歴史を見ていく。
卑弥呼(の時代の権力者)や平安貴族、戦国の大名たちはどんな料理を食べていたのだろうか。発掘品や文献などから解き明かし、再現した料理の数々がこのコーナーでは紹介されている。
卑弥呼の時代、調理自体はシンプルだが、食材はかなり豊かだったようで、真鯛や鮑など今の時代でも高級な食材が饗されていたようだ。

時代は進み、江戸時代になるとファストフードが人気となる。特に労働者が多く集まっていた江戸では、寿司や天麩羅が人気だったようだ。
寿司は、今よりも一貫の大きさがかなり大きかったようで、一つでお腹一杯になりそう。

天麩羅もファストフードとして食べ易いように、今の串カツのように串に刺して饗されていた。

グルメブームは江戸時代にもあったようで、レシピ本も数多く出版され、人気を博していた。卵料理だけを百種類紹介したものなどバリエーションも豊か。
そんな料理本に載せられたレシピを再現した料理が紹介されている。こちらは「源氏卵」。源氏車と呼ばれていた御所車の車輪を模した卵料理で、レンコンの輪切りと卵で作られている。これ、現在でも料亭で出てきそうな料理。

世界的にもブームとなっている「和食」。だが、その土地土地で色々とアレンジされていて、ここでも「和食とは何か?」が問われている。文化としての「和食」をどう守り、どう発展させていくかが今後の課題となっている。

感想

「和食」をテーマにした展示ってどんなものだろう?と思ったのが興味を持ったきっかけ。その答えは、科学的な分析によるものだったり、文化・歴史を追うものだったり、ちょっと昔も含んだ現代の風俗だったりとかなり多角的な展示になっていた。いや、面白かった。

今食べられている野菜のほとんどが外国原産だったということも初めて知った(もっと在来種が多いと思っていました)。また、発酵食品の生産過程が非常に複雑で、菌の存在を知らなかった時代になんでこんなに微妙なコントロールができたのかと驚いた。

食文化の風俗を紹介するのに漫画の「サザエさん」が使われていたのは、馴染み深く、また楽しいものだった。戦後の食文化、生活習慣がそこには分かり易く示されていた。電気炊飯器や冷蔵庫がサザエさん一家にいつから導入されたか(漫画に登場し始めたか)の年表は秀逸。インスタントラーメンはこの頃にはもう国民食というか、和食の一つとなっていたんだ、なんてのがよくわかった。

食はまさに文化そのもの。そのことを再認識させてくれた楽しい企画展でした。

美術展情報

  • 会期 : 2023/10/28(Sat) – 2024/02/25(Sun)
  • 開館時間 : 09:00 – 17:00
  • 休館日 : 月曜日
  • 料金 : 一般・大学生 2,000円 、小・中・高校生 600円
  • 公式サイト : 特別展「和食 ~日本の自然、人々の知恵~」
  • 巡回先 : 全国巡回予定(山形、宮城、長野、愛知、京都、熊本)
  • 図録 : 2,420円(税込)
  • 参考書

コメント

  1. 中野 潤子 より:

    遅ればせながらあけましておめでとうございます。今年も色々教えてください、楽しみにしています。
    和食の展示いろいろな面からされていますね。面白いです。

    • bunjin より:

      こちらこそ、本年もご贔屓に。
      「和食展」、思った以上に混んでいました。だれもが興味のある話なのでしょう。