「おしゃべりな本たち-謎解き!紙と文字から探る内閣文庫-」

美術展・写真展
「おしゃべりな本たち-謎解き!紙と文字から探る内閣文庫-」

国立公文書館「おしゃべりな本たち-謎解き!紙と文字から探る内閣文庫-」展を観てきました。

国立公文書館では写真撮影OKです。ただし、フラッシュ・三脚NGなどの注意事項がありますので、確認の上、撮影してください。

展示内容

公式サイトの説明によると

本展では、国立公文書館開館50周年・公文書管理法施行10周年を記念して、本の形態や素材に着目する書誌学の手法を用い、当館が誇るコレクションである内閣文庫から、様々な知識を教えてくれる「おしゃべりな本たち」をご紹介します。

展示会情報:国立公文書館

とのこと。

内閣文庫は、明治以降、内閣によって保存されてきた古書・古文書のコレクションのこと。それ以前、江戸幕府が「紅葉山文庫」として保管していたものや、昌平坂学問所、和学講談所(塙保己一創立)の蔵書だったものも含まれる。

展示構成は以下の通り。

  • はじめに ― 本の形が教えてくれるもの
  • 1.ページ数に気をつけろ!
  • 2.装丁の謎を追え
  • 3.紙の世界
  • 4.旧蔵者の痕跡を辿る
  • 5.書物の敵
  • さいごに ― 資料を将来に残すために

「秘閣粘葉本 平家物語」と呼ばれる、江戸時代初期に製作された「平家物語」の写本。粘葉本とは、各ページを糊付けする装丁による本のこと。ところが、実際のこの本は「綴葉装(てつようそう)」と呼ばれる、糸とじ(大学ノートと同じパターン)の装丁となっている。金泥・銀泥による装飾が施されているが、中身を見ると乱丁(順番が間違っている)・落丁(必要部分が抜けている)が多く、読書のためよりは、装飾品として作られた一冊と思われる。

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このように、その本の装丁や、使われている用紙、装飾などをみると、一冊ずつに特徴(個性?)を持っていることがわかる。国立公文書館では、書物の中身もさることながら、その本自体の研究・調査も進めている。

「管見抄(かんけんしょう)」唐の白居易(はくきょい)(772〜846)が著した漢詩文集『白氏文集(はくしもんじゅう)』から、治政の参考になる詩文を抄出した一冊。糊付けによる装丁方法「粘葉装(でっちょうそう)」が用いられている。
「粘葉装(でっちょうそう)」は耐久性に欠け、糊が剥がれてしまうなどの問題があるため、あまり使われなくなっていった。

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林家が所蔵していた「源氏物語」。古活字版と呼ばれる印刷方法によるもの。木製の活字を使った印刷だ。左は手作業による写本、右側の本は整版(一ページ分を版木に彫って印刷したもの)による一冊。

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「文献通考」は朝鮮王朝において、銅製活字を使って印刷された、中国の諸制度に関する解説本。江戸時代の日本では木製活字が普及していたが、それ以前の朝鮮王朝では既に銅製活字を利用していた。印刷された書籍は日本にも多く輸入され、「文献通考」は徳川家康も所蔵したと言われている。以降、歴代の徳川将軍や大名たちも愛読していた。

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「見返し」(表紙の裏側のページ)は、そこに文字が印刷されることはないため、装飾を施されるようになっていく。この一冊「三十六人歌合」は、金箔が貼られて、狩野探幽による竜虎図が描かれた豪華なもの。本文の文字は近衛前久によると言われている。

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所有者が本にサインを書いたり、印を押したりすることがある。所有者が変わるたびに追記されていくこともあるので、その本の来歴を追うヒントにもなる。

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書物の敵である虫食い、カビ、そして人間による破損は免れない。虫干しをして本を守ったり、写本を作成して(つまりはコピーして)中身を伝え続けたりして書物は守られている。
紅葉山文庫を創設した徳川幕府も保存に熱心で、特に徳川家康は伏見在住の時も、駿府に移っても積極的に活動していた。さらには出版事業も行っていて、駿府で制作されたものは「駿河版」と呼ばれている。

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感想

千三百年前の「古事記」や、千年前の「源氏物語」を現代の我々が“読む”ことができるのは、先人たちが書物として伝え、残してきてくれたお蔭。記録を残すって本当に大切で、そして大変なことなのだと改めて知ることができる企画展です。

しかも、その本は一冊一冊に「個性」を持っている。どんな紙を使ってどのように装丁されたかはもちろん、誰が装飾を施し、誰が追記(イタズラ書き)をし、そして誰が所有していたかなどの「個性」を知ると、さらにその本に興味が出てくる。

本棚が一杯になってしまったこともあり、最近は極力、電子版(Kindle)で本や雑誌を購入して読むようにしています。持ち運びにも便利ですからね。“本の内容”に興味があって読む場合は、「紙の手触りが…」とか「ページをめくることによって…」などの拘りはありません。
でも、物としての「本」には魅力を感じます。ヨーロッパの装飾写本はまさに芸術品と言えますが、和書も負けていないくらいの装丁がされたものがあったり、歴史的有名人による手書きのものがあったりと、魅力たっぷり。
そんな書物の「本物」を間近で観られる国立公文書館、ありがたい存在です。記録を残すことは国の重要な役割で、その蔵書も国民共有の財産ではあるので、「観る権利がある」という方が正しいのかも知れません。が、やっぱりこのようにキュレートしてくれないと楽しく勉強することはできないし、その点では毎回の企画展はありがたいものです、やはり。

今回も楽しく学ぶことができました。

美術展情報

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